タイ・スラサク・パンチャルーンワラクン観光スポーツ大臣が5月11日、外国人観光客向けの「フリービザ滞在期間」を現行60日から最大30日に短縮する政府措置を「閣議(クロムロム)に正式提出する段階に入った」と明らかにした。詳細は外務省が起案し、対象93カ国の各国別に滞在期間を調整する形式となる。背景には「観光客平均滞在9日」のデータがあり、30日でも十分という判断だ。同時に、観光客を偽装した犯罪者の入国制限効果も期待されている。
現行制度では、93カ国の国民がタイに観光目的で入国する際、フリービザ(査証不要)で最大60日の滞在が可能だった。今回の政策見直しでは、(1)滞在日数を最大30日に短縮、(2)各国の観光客の実際の滞在パターンに合わせて国別に調整、という2点が骨子となる。具体的な国別の短縮幅は外務省が個別に決定する。
短縮の根拠として、スラサク大臣はタイ観光局の統計データを示した。タイを訪れる外国人観光客の平均滞在日数は9日強。最長滞在の傾向があるノルウェー人観光客でも平均21日にとどまる。したがって、30日のフリービザ期間があれば「99%の観光客はカバーできる」というのが大臣の判断だ。
政策の狙いには「観光客を装った犯罪者の入国制限」が含まれる。タイでは近年、フリービザで長期滞在しながら詐欺・違法ビジネス・薬物関連の犯罪に関与する外国人事例が増加。直近では5月8日のチョンブリ県中国人ミンチェン氏の武器庫事件、スラタニ県の7か月で外国人摘発2,603件など、外国人犯罪の組織化が顕在化していた。
「研修・治療・長期滞在」など滞在期間が30日を超える目的の人物は、別カテゴリの正規ビザ(労働ビザ、長期滞在ビザ、医療ビザなど)を申請する必要がある。この区分により、滞在目的と滞在期間の整合性を入国時点で明確化し、「フリービザで入国して長期滞在しながら別目的の活動をする」グレーゾーンを縮小する狙いだ。
タイ観光業界への影響については、スラサク大臣は「全体としての観光市場への影響はない」と強調した。観光客平均滞在9日というデータが、30日制限でも観光需要が満たされる根拠となっている。一方で、特定の客層(リタイア組、ノーマド系、長期休暇文化のヨーロッパ人)には実質的な影響がある可能性が指摘される。
タイ観光業界はすでに4月の外国人観光客が前年比-7%、パッタヤホテル稼働率が60-70%から30-40%に急落するなど苦境にあり、新たなビザ規制が一部業界(コンドミニアム長期賃貸、リタイア顧客向けレストラン等)の追加負荷になる可能性は否定できない。
タイ在住の日本人駐在員家族や日本からの長期出張者にとっては、注視すべき政策変化だ。日本人観光客の平均滞在は10日強で、ほとんどのケースは30日以内で完了する。ただし、(1)親族の長期訪問、(2)駐在員の妻子が一時帰国・再来タイ、(3)30日を超える長期休暇、などのケースでは観光ビザではなく正規ビザの取得が必要となる場面が増える。最新の外務省・タイ大使館の通達を確認することが推奨される。