スラタニ県知事が5月10日、就任以降7か月(2025年10月1日〜2026年4月30日)の外国人違法行為取締り実績を公表した。総件数は2,603件、内訳は不法入国・滞在122件、無許可就労199件、麻薬273件、道路交通法違反1,757件。同期間中にイスラエル人だけで179人が立件され、特にパンガン島でのイスラエル人居住申請が1,000件規模に達している点を明らかにし、引き続き「ノミニー」(タイ人を表面に立てた違法事業)対策を強化する方針を示した。
スラタニ県は南部のサムイ・パンガン・タオの3つの主要観光島を抱え、外国人滞在者・観光客の集中度が高い。県の取締り実績を見ると、最大件数の道路交通法違反(1,757件)は無免許運転・道路交通規則違反・速度超過などを含み、観光地での外国人による日常的なルール違反が常態化している実態を示している。麻薬273件、無許可就労199件、不法入国・滞在122件の合計499件は、より深刻な「常態化した不法行為」の規模を示す。
特に注目されるのが、パンガン島のイスラエル人コミュニティだ。パンガン島は世界的に有名な「フルムーンパーティー」と「リトリート文化」の中心地で、長期滞在型のイスラエル人観光客(兵役後の若者など)が集中している。県知事は2025年10月以降、特別作業チームを編成してイスラエル人を含む外国人の違法行為を集中的に取り締まる体制を整えていた。
「居住申請1,000件」という数字は、実際の不法行為とは別に、長期滞在ビザ・居住権申請が集中しているケースを意味する。これらの申請の多くは「タイ人を表面上の事業主に立てたノミニー構造」で運営されるリトリート施設・カフェ・ヨガスタジオなどに紐付いていると推測される。県側は「真の事業所有者の確認」「ビザ目的と実態の整合性」のチェックを厳格化している。
「ノミニー(nominee)」問題はタイ全土で共通する大きな課題だ。タイの法律では、特定の業種で外国人による直接所有が制限されており、「タイ人パートナーを名目上の所有者にする」抜け道が古くから使われてきた。2025年からはアヌティン政権がこの問題に本格的に取り組み始め、5月10日にもアヌティン首相がプーケット・フリーダム海岸でマフィア・違法侵食の摘発に乗り出している。
スラタニ県の取締りは、より広範な観光地ガバナンス引き締めの一環だ。プーケット県では5月8日に外国人取締り強化(無免許運転で国外退去)、5月10日にアヌティン首相が脱税倉庫摘発でラノーン緊急飛行など、観光地・国境地帯での外国人犯罪の同時並行的な摘発が続く。
タイ在住の日本人駐在員にとって、今回のスラタニ県の取締り強化は、サムイ・パンガン・タオへのレジャー旅行で「現地ヨガスタジオ」「リトリート施設」「マッサージ店」を選ぶ際の判断基準にも影響する。ノミニー構造の下で運営される施設は、業務免許の真実性、サービス品質、税務処理に問題を抱える可能性があり、結果としてトラブル発生時の責任所在が不透明になるリスクがある。