バンランムン警察署が5月10日13時、パッタヤ・ナークルア区で発生した「女性なりすまし射殺事件」の容疑者4人を一挙に拘束した。実行犯のキッティ(通称ピム、32)は「殺すつもりはなかった、殴るだけのつもりだったが銃が暴発した」と弁明。彼女のシリウィモン(通称アンアン)が亡くなった被害者と密かにメッセージ交換していたことに激高したのが動機と見られている。一方、シリウィモン側は「亡くなった人物と交際していたわけではない、彼が銃を持っているとは思わなかった」と全面否定している。
事件は5月10日朝、パッタヤ・ナークルア区スクンビット15/12通りでアピチャイ(通称ヌイ、34)が頭部を至近距離から撃ち抜かれて即死した一件。被害者は「女性とのチャットで呼び出された」とされ、姪が現場目撃者として「事前にチャットの誘いがあった」と証言していた。監視カメラ映像で射殺の瞬間が鮮明に記録されており、警察の特定作業が早期に進んだ。
サラウット・ヌッチャナート警視(バンランムン署長)と、ヨンユット・ワーンヌア副署長(捜査担当)率いる捜査班が4人を一斉に拘束。実行犯のキッティ(32)に加え、シリウィモン(おとり役)と他2人が共謀容疑で取り調べを受けている。具体的な役割分担は今後の捜査で明らかになる予定。
実行犯の「殴るつもりだったが銃が暴発」という弁明は、量刑緩和を狙った典型的な弁明パターンだ。ただし、現場には.38口径の薬莢が残されており、頭部に至近距離から撃ち抜かれた状況から、過失致死より計画性のある殺人として立件される可能性が高い。タイの刑法では、計画的殺人は終身刑または死刑相当。「もみ消し(クリア)」の余地は限定的だ。
恋愛のもつれ(タイ語で「ปมหึงหวงเรื่องชู้สาว」、シューサーオ=隠れた関係を巡る嫉妬)は、タイの殺人事件で最も多い動機のひとつ。今回はSNSのチャット履歴を発端に「おとり役の女性」「実行犯の男性」がチームを組み、被害者を呼び出して射殺するという計画的犯行の構造が浮かんだ。背景にはタイ社会のSNS浸透と、嫉妬感情を即座に行動に移しやすい銃器入手の容易さがある。
タイのストリートにおける銃器入手の容易さは、別件でも問題化している。同じく5月、チョンブリ県ナーチョムティアン警察署管内で発覚した中国人ミンチェン氏の武器庫事件では、軍用銃M4がパッタヤ射撃場の訓練教官や元海軍兵を経由して密売されていた。今回の.38口径も、同様のグレーマーケットから流通した可能性がある。
タイ在住の日本人駐在員には直接の接点はないが、「SNSでの安易な対面待ち合わせ」「未知の相手から呼び出された場合の警戒」など、防犯意識として読み取るべき点はある。バンコク・パッタヤ・プーケットの繁華街周辺では、深夜の単独移動・人気の少ない路地への進入は避けることが基本となる。