サムットプラカン県プラサムットジェディ郡ラエムファパ区のチャオプラヤ川沿いの廃屋で5月10日、ベッド上に乾燥した白骨遺体が発見された。第一発見者はカニを取りに川辺に来ていた男性で、彼は対岸の廃屋(旧ガソリンスタンド跡)の中から「手招きする人影」を見て、思わず吸い寄せられるように建物に入ったところ、遺体に行き着いた。死後60日以上が経過していると見られる。
通報を受けたプラサムットジェディ警察署が捜査官と法医学鑑定機関、現地救援財団の職員を派遣した。遺体は仰向けで左に向けた姿勢でベッド上に横たわり、頭部には毛髪が部分的に残存。乾燥した状態で、外傷の有無は司法解剖を待つ必要がある。家屋内から「プラセリット・シリラタナワッチャラクン」(60、パトゥムタニ県住民)の身分証コピーが発見されたが、遺体との確実な関連性は今後の鑑定で判定される。
カニ取り男性が見たという「手招きする人影」の正体は判然としない。タイの伝統的な信仰では、死者の霊が生者を「導く」「自分を発見させる」とされる例が地方の口承で語り継がれており、今回の事案もその系譜で語られる可能性が高い。一方、合理的な解釈としては、廃屋内の風で揺れる布や反射の錯視という見方もある。発見者の証言は警察が取調べ中で、現時点で「事件性」を断定するに至っていない。
廃屋となった旧ガソリンスタンドは、近年の燃料価格変動と立地条件で営業を停止した施設で、サムットプラカン県下のチャオプラヤ川沿いには同様の廃業店舗が点在する。住人不在の建物が地域コミュニティの目から外れ、不法滞在・不法侵入の温床になるケースが増えている。今回も、被害者(プラセリット氏が遺体本人と判明した場合)が何らかの理由で同所に立ち入り、誰にも気付かれずに死亡していた可能性がある。
タイ警察は身元特定を急ぐとともに、死因の特定(病死・餓死・他殺の可能性)と、ID所有者プラセリット氏のパトゥムタニ県住所での生存確認を並行して進める。死後60日以上という推定時間からすると、3月初旬から中旬の死亡となるが、当時に行方不明者届が出ていなかったかも捜査ポイントになる。
タイ在住の日本人にとって、サムットプラカン県は工業団地への通勤ルート(バンコクから空港・パッタヤへ向かう途中)として馴染みのある場所だが、廃屋・廃業施設への立ち入りは事件性のリスクをはらむため避けるべきだ。同種のケースは過去にもあり、不動産取引の際にも「過去にこういう事案があった建物か」を確認する習慣が根付き始めている。
タイの民俗的な「幽霊体験」と現実の発見が重なる事案は、SNSで急速に拡散しやすい。地元住民・観光客が現場周辺に集まる「祈祷儀礼」「ローソク献花」などの動きも予想されるが、警察捜査の妨げにならない節度ある対応が望まれる。