タイ深南部ナラティワート県の泥炭湿地森林「バチョー湿地」(ป่าพรุบาเจาะ)で5月4日から続く山火事が、強風と乾燥のため制御不能の状態に陥っている。県知事は5月10日、消防車14台を緊急動員する命令を出し、放火犯の告発につなげるための賞金5万バーツを設定した。これまでに被害面積は約400ライ(約64ヘクタール)に達したと報じられている。
火災の発生は5月4日。場所はナラティワート県イーンゴー郡のバチョー協同組合居住地区周辺の泥炭湿地森林で、深南部マレーシア国境に近い。タイ南部は5月に入って深刻な乾燥と強風に見舞われており、湿地特有の地下泥炭層に火が及ぶと地表上では消火したように見えても再燃を繰り返し、消火が極めて困難となる。
ナラティワート県知事は早期段階の5月2日、県内全域での野焼き・農地焼却を5月1日から31日まで禁止する措置を発表。違反行為に対する取り締まりを強化していたが、今回の山火事は禁令施行後も放火が継続している可能性を示唆している。県知事は「自然発生ではなく、住民が森林産物の採取目的で意図的に火をつけているケースが続いている」との見方を示し、放火犯逮捕につながる情報提供者には5万バーツ(約24万5000円)の賞金を出すと表明した。
消火作戦には陸軍歩兵第151連隊と県の消防隊・救援隊が動員されており、海軍はヘリコプターを派遣して空中からの放水バッグ投下を実施。住民地区への延焼を阻止する作業が24時間体制で続けられている。煙は航空管制にも影響を及ぼしており、近隣のナラティワート空港・ハジャイ国際空港の運航にも警戒が要請されている。
タイ深南部の泥炭湿地火災は、毎年5-7月の乾季から雨季への移行期に頻発する。バチョー湿地、トーデーン湿地、その他の保護林が被害を受け、煙が深南部全域および近隣マレーシア・シンガポールにまで拡散する「越境ヘイズ」の原因となる。インドネシア・スマトラの泥炭湿地火災と並んで、東南アジアの大気汚染を引き起こす主要因のひとつだ。
タイ気象局はすでに5月のエルニーニョ突入確率61%を警告しており、少雨と高温が長期化する見通し。この気象条件下で泥炭湿地火災は容易に拡大し、消火コストと煙害の両面で県・国レベルの負担が膨らむ。
ナラティワート県を含む深南部3県(パッタニー、ヤラー、ナラティワート)は、タイ国内で日本人観光客が訪れる機会は極めて限定的だが、ハジャイ・ソンクラー方面への陸路移動の際には煙害情報を確認する必要がある。タイ防災局(ปภ.)と気象局のリアルタイム情報を確認しつつ、N95マスクの携行が推奨される時期となる。