パッタヤ近郊で5月10日午前6時頃、有名スピリチュアル実践者「アジャーン・ケン」(อาจารย์เก่ง)の自宅と神社を、武装した5人の襲撃集団が急襲する事件が発生した。襲撃犯は住人を暴行した上で銃を発射しようとしたが、銃が暴発・故障したため射撃に失敗。慌てて逃走した。一連の「カルマを解く」業の不祥事で社会的注目を集めていたアジャーン・ケンへの直接的な敵意行動として、警察が動機を捜査している。
事件現場はパッタヤ近郊の平屋コンクリート住宅。襲撃は早朝の5時台から6時にかけて発生し、5人の襲撃犯が住宅に侵入。住人を物理的に暴行した後、銃を持ち出して住人の一人を射殺しようとしたが、銃が機械的故障で発射されなかった。失敗を悟った襲撃犯は現場から逃走した。
襲撃の動機は捜査中だが、背景にはアジャーン・ケンを巡る一連の社会問題がある。タイの「業を解く」(แก้กรรม、ケーカム)と呼ばれる一種の宗教的実践は、現代タイの中産階級・有名人の間で根強い人気を持つ一方で、心理的弱者から多額の金銭を搾取する詐欺・性的搾取の温床としてもたびたび問題化してきた。アジャーン・ケンの場合は、5月初旬に32歳のビジネスマンが「業を解く」名目で性的暴行を受けたとして中央捜査局に告発した経緯がある。
その後、ランプン県の有名占い師施設が閉鎖された事案も含めて、占い・スピリチュアルビジネス全般への社会的不信が高まっていた。今回の襲撃が、被害者側の報復行動だったのか、業界内の利権争いだったのか、別の動機があったのかが今後の捜査の焦点となる。
タイの占い・霊験商法は、世界的にも特異なほど深く社会に根付いている。仏教国でありながら同時に道教・ヒンドゥー教・アニミズム・占星術が混在し、政治家・実業家・芸能人が「自分の運勢を見てもらう」ことが日常的だ。アジャーン・ケンのような有名占い師の影響力は政治・経済の意思決定に及ぶこともあり、彼を狙った襲撃は単なる個人事件にとどまらない政治的な側面も含む可能性がある。
警察は、襲撃犯5人組の身元特定、銃の出所、襲撃計画の事前準備の有無を中心に捜査を進めている。アジャーン・ケン本人に身体的危害が加わったかどうかは現時点で公表されていないが、銃の暴発という幸運がなければ住人の死傷者が出ていた可能性が高い。
タイ在住の日本人駐在員にとって、占い文化は日常的な接点が薄いが、地元タイ人パートナー・友人・取引先が真剣に占いを信頼するケースは少なくない。今回のような襲撃事件は、霊験商法を巡るリスクが「金銭被害」だけでなく「物理的暴力」にまで及ぶ社会構造を示している。占い師・スピリチュアル指導者を巡るトラブルに巻き込まれないためには、タイ人パートナーが過度に依存する場合の警戒、契約書面のないお金のやり取りへの注意が基本となる。