タイ南部の人気観光地サムイ島とパンガン島で、外国人がタイ人を名義に立てて事実上経営する「ノミニー会社」が7,000社規模に上ることが商業開発局の調査でわかった。タイ人1人で87社の株を保有する異常事例も把握され、政府は外国人事業法違反として一斉捜査に乗り出している。
商業開発局、サムイ・パンガン島でノミニー疑い7,000社を特定
タイ商業省商業開発局が両島で実態調査をおこない、外国人がタイ人名義を借りて事実上の経営権を握っている疑いの企業が約7,000社あると公表した。報道によると、両島で新規登記される会社のうち外国資本の比重は最大で68%にも達するという。タイ警察庁と特別捜査局も連携して土地保有や資金の流れを調べており、政府は「容赦なく立件する」方針を打ち出している。
1人で87社の株を保有、典型的なノミニー手口
調査の中で、1人のタイ人が単独で87社の株を保有している異常な事例も明らかになった。これは外国人投資家が会社設立時に51%以上のタイ人株主を要求するタイの法律を回避するため、特定のタイ人を「貸し株主」として複数の会社に名義貸しさせる「ノミニー」と呼ばれる手口の典型だ。本人にはほぼ収入がなく、形式的に株主名簿に名前を載せているだけの場合が多い。
業種は不動産・ホテル・レストラン、観光地が丸ごと外資化
ノミニー疑いの企業の業種は、コンドミニアムやヴィラなどの不動産が最も多く、ツアー、ホテル、レストランが続いた。サムイ・パンガン島は欧米人の長期滞在者やフルムーンパーティー目当ての観光客が集まり、表向きはタイ人経営でも実態は外国人オーナーという物件が広がってきた。表向きの所有者と実質支配者の不一致は、観光収入のタイ国内への還流を阻み、現地のタイ人事業者を圧迫すると指摘されてきた。
タイの外国人事業法、違反は懲役・罰金・会社解散
タイの外国人事業法は、指定業種で外国人が51%以上の株を持つことを禁じている。違反すると懲役3年以下、罰金10万バーツから100万バーツ(約49万〜490万円)、加えて1日2万バーツまでの追加罰金が科される。会社解散命令も下されうる。タイ人ノミニー側も処罰対象で、外国人事業者と同等の罰則が適用される。日本人駐在員にとっても、タイで会社を作るときに「ノミニー方式」を勧められたら違法スキームの可能性があり、リスクは大きい。