チェンマイ県ハーンドン郡で5月8日、観光警察がある住宅に踏み込み、中国人プロデューサーや俳優ら8人を逮捕した。違法に「縦型シリーズ」と呼ばれるスマホ向けショートドラマを撮影していたという。
観光警察、中国人映画クルー8人を現行犯逮捕
観光警察は情報提供を受けてチェンマイ県ハーンドン郡の住宅に立ち入り検査をおこなった。現場では中国人スタッフとタイ人通訳が映画撮影をしている真っ最中で、撮影許可書類は一切なく、タイ政府職員の現場監督も付いていなかった。クルーは観光ビザで入国しており、就労許可も持っていなかった。警察は8人全員を「外国人不法就労」容疑でハーンドン警察署へ送致した。
撮影されていた「縦型シリーズ」とは
逮捕された中国人らはプロデューサーと俳優を名乗り、タイで撮影していたのは「縦型シリーズ」だと供述した。スマートフォンの画面に合わせて縦長で撮影される短尺ドラマで、中国国内で爆発的に人気が広がっているフォーマットである。1話1〜2分、全80〜100話を一気に視聴する中毒性の高い作品が多く、独自の有料視聴アプリで世界配信される事例も増えている。海外ロケで撮影コストを抑える動きが広がっており、タイがその撮影地として狙われやすくなっている。
なぜチェンマイが選ばれたか
クルーはチェンマイを撮影地に選んだ理由について、中国人観光客に知名度の高い人気観光地だと供述している。古都の街並み、寺院、緑豊かな郊外住宅は視聴者にとって目に馴染みやすく、中国人が憧れる東南アジアの空気を演出しやすい。プーケットやパタヤと違い、ハーンドンのような郊外は静かで一軒家を借りて撮影しやすい点も都合がよかったとみられる。許可なしの撮影が以前から横行しているのではないかという指摘も出ており、今回の摘発はその一例とされる。
タイの映画撮影規制、最大100万バーツ罰金
タイで映画やドラマを撮影する場合、2008年制定の映画・ビデオ法に基づき、政府職員の現場監督と脚本や粗筋の事前審査が義務づけられている。国家イメージを損ねる内容や歪曲表現の流通を防ぐためで、違反した場合の罰金は最大100万バーツ(約450万円)に達する。観光警察は8人について不法就労容疑で送致したうえで、無許可撮影については観光庁の映画・ビデオ委員会に送り、別途処分を求める方針だ。日本人視聴者の中にも縦型短編ドラマの常連はいるが、映る街並みのなかには許可なしで撮影されたものが含まれている可能性がある。