「家から持ってきた水は没収されるのに、ゲート内売店で買った水はなぜ機内に持ち込めるのか」。長年の旅行者の疑問に、タイの航空エンジニア、クン・プー・ニサラ氏がSNSで解説した投稿が話題になっている。100ml制限のルーツは2006年8月10日、英国情報機関MI5が阻止した24人のテロ計画にある。
クン・プー氏によると、2006年8月10日の朝までは世界中の旅行者が普通に水を機内に持ち込めていた。それから数時間後、世界中の空港が同時に液体機内持ち込み禁止を宣告。原因はMI5が摘発した英国発の航空機テロ計画で、容疑者24人が「炭酸飲料の瓶に化学薬品を隠して機内で混合し、大西洋上空で同時に10機を爆破する」プランを練っていたことが発覚した事件だった。
「ペットボトルにほんのちょっとしか水が残っていないのに、なぜ没収されるのか?」という疑問にも明快な答えがある。空港のX線検査機は中の液体量ではなく、容器の容量で判定しているからだ。極端に言えば、500mlのペットボトルに水が30ml残っていても、容器が500mlサイズである以上「液体100ml超えの容器」として扱われ、ルール違反になる。100ml以下の小分けボトルに移し替えれば持ち込めるが、これも各国空港でジップ袋・透明袋への収納が条件となる。
ゲート内の売店で買ったドリンクが持ち込める理由は、ペットボトル・缶・ジュースが「保安検査済みエリアで販売」されていること。空港検査場の通過後にはじめて流通する商品であり、製品自体が認可された供給ルートを経ているため、爆発物・違法化学薬品の混入リスクが低いと判定されている。乗継便のために購入した飲料を「免税店専用パッキング袋(STEB / Security Tamper-Evident Bag)」に入れて持ち運ぶ必要があるケースもあり、これも改ざん検知のための仕組みだ。
クン・プー氏は具体例として、「高価な香水」「底に少しだけ残ったクリーム」「タイ土産のナンプリックヌム(北部チリペースト)」を持ち込もうとして泣く泣く廃棄するケースを挙げた。在タイ日本人にとって特に痛いのは、日本帰国時にタイ料理ペーストや調味料、化粧品サンプルを「液体扱い」で没収されるパターン。スーツケースを必ず預け荷物にすることで回避できる。
タイの空港では、スワンナプーム(BKK)、ドンムアン(DMK)、プーケット(HKT)、チェンマイ(CNX)など主要空港すべてで国際標準の100mlルールが適用されている。タイ国内線の場合は若干緩いケースもあるが、ペットボトルの飲料持ち込みは国際線・国内線とも禁止されている空港が多い。
タイ空港公社(AOT)は5月10日、5年間で800億バーツの空港拡張投資計画を打ち出したばかり。スワンナプーム東側拡張で年間旅客処理能力を1500万人増やす方針だが、利用者目線では「100mlルール対応の保安検査の遅さ」も同時に改善されることが期待される。