タイ・台湾の貿易額が2026年第1四半期(1-3月)に前年同期比+47.8%と過去最高を記録した。台湾経済部の集計が明らかにしたもので、半導体・電子部品を軸とした技術系の取引拡大が背景にある。台湾政府は同時に、台湾企業のタイ進出を後押しする「Taiwan-Thailand Tech Talent Service Platform」を拡充し、人材採用と研修プログラムを強化する方針を示した。
47.8%という伸び率は、2024年から始まったタイ・台湾貿易の構造的拡大を裏付ける数字だ。背景には3つの大きな流れがある。第一に、米中貿易摩擦と地政学的リスクを受けて台湾系製造業がタイへ生産拠点を移転または増設する動き。第二に、AIサーバー需要の急拡大を受けた半導体・GPU関連部品の物流増。第三に、タイがEV製造・電子部品ハブとしてのポジションを固めつつあり、台湾サプライヤーとの結合度が高まったこと。
特に注目されるのが台湾系企業のタイ進出だ。鴻海(フォックスコン)、緯創資通(Wistron)、Delta Electronics、Quanta Computerなどの大手電子製造受託企業が、ラヨーン・チョンブリ・チャチェンサオの東部経済回廊(EEC)を中心に増産投資を進めている。タイ投資委員会(BOI)の認可案件でも、台湾系企業の比率が2024年以降明確に上昇している。
「Taiwan-Thailand Tech Talent Service Platform」の拡充は、進出した台湾企業の現地人材確保を支える仕組みだ。タイ国内の理工系人材を台湾系企業向けに採用・育成し、台湾本社からの技術移転をスムーズにする狙いがある。タイの大学・職業訓練校と連携して、半導体・電子部品・自動制御の専門人材を継続供給する体制を作る。
日本人駐在員の目線で見ると、これは間接的な脅威でもある。日系自動車・電子部品メーカーがタイで占めてきた製造拠点の優位性が、台湾系の急速な拡大によって相対的に後退する可能性がある。一方で、現地サプライチェーンの厚みが増すことは部材調達のオプション拡大というメリットにもつながる。
タイ政府の経済戦略との整合性も大きい。アヌティン政権は5月10日にAOTが800億バーツの空港投資計画を発表し、東南アジア物流ハブの地位確立を狙う。同じくエネルギー転換に4000億バーツの借入勅令も公布したばかり。インフラ・電力・人材の三位一体で「中国+1」「米中の中間地帯」としてのポジションを強化する流れだ。
台湾政府は2024年以降、東南アジア向けの「新南向政策」を強化してきた。フィリピン・インドネシア・ベトナムにも投資を分散しているが、製造業の親和性とインフラ整備度合いではタイが最も成熟している。47.8%増という今四半期の数字は、新南向政策の中でタイが最重要パートナーに位置づけられていることを示すバロメーターと言える。