バンコクの巨大週末市場チャトゥチャック(JJ Market)で、店主たちが「来客は多いが買わない、売上60%減でコロナより重い」と訴えている。中国人観光客の急減と、来訪が増えているインド・ベトナム・欧州の観光客の消費単価の低さがダブルで効き、市場内には貸出・転売の張り紙が並ぶ事態となっている。タイ観光業の構造変化が地上で起きている象徴的な現場だ。
チャトゥチャック市場店主「来客は多いが買わない」、売上60%減
チャトゥチャック市場の店主が口を揃えるのは、市場内の人通り自体は維持されているが、レジが鳴らないという現象だ。週末の人波はある程度戻ってきたものの、客は商品を見るだけ・写真を撮るだけで購入に至らないケースが多い。ある店主は売上が60%減と訴え、「コロナ禍の時よりも今の方が重い」とコメントしている。コロナ時代は来客自体がなかったので家賃を一時的に止めるなどの対応も取られたが、現在は「営業しているのに収益が出ない」という別種の苦境だ。
中国人観光客の急減が直撃、欧州・インド・ベトナム客は消費単価が低い
最も痛手なのが、中国人観光客の急減だ。チャトゥチャック市場の主要顧客層だった中国人観光客は近年、数が激減している。代わりに増えているのはインド人、ベトナム人、欧州人客だが、いずれも中国人客に比べて1人あたりの購入額が小さい。「中国人ほどお金を使う観光客はいない」というのが、現場のリアルな実感だ。これが市場全体の売上を半分以下に押し下げている主因とみられる。
タイ柄衣類・雑貨の売上が落ち込む、店舗の貸出・転売が相次ぐ
打撃が特に大きいのが、タイ柄プリントの衣類、エスニック雑貨、土産物を扱う店舗だ。これらは中国人観光客の定番購入カテゴリーで、品揃えと価格設定もそのニーズに合わせて作られていた。市場の通路には「貸出します(ให้เช่า)」「権利譲渡(เซ้ง)」の張り紙が並ぶ店舗が目立つようになり、撤退や事業継承を急ぐ動きが広がっている。
在タイ日本人駐在員にも示唆、タイ観光業の構造変化と街並み
在タイ日本人駐在員にとっても、チャトゥチャック市場は週末の散策・買い物・友人接待の定番スポットだ。今後数か月でさらに店舗の入れ替わりが進めば、なじみの店が無くなる可能性もある。タイ政府はフリービザの期間短縮を検討するなど観光客の質と量の両面で政策調整を進めているが、中国人離れに対する具体的な代替市場づくりが追いついていない。チャトゥチャックの現状は、タイ観光業全体の中長期的な構造変化を示唆する現場で、注視に値する。