タイ農業協同組合省は5月8日、2026年の田畑米保険プロジェクトを承認した。政府と農業協同組合銀行(BAAC)が小規模農家の保険料を共同で補助する仕組みで、1人あたり10ライ(約1.6ヘクタール)までが対象となる。エルニーニョによる深刻な旱魃と突発的な洪水に備える狙いで、衛星画像を使った被害評価で7〜14日以内に賠償が支払われる体制を整える。
タイ農業省、2026年米保険プロジェクトを承認
承認したのは農業協同組合省ウィナーロート事務次官を議長とする「農業保険推進委員会」第1回会議だ。出席したピーラパン経済局長らが議論を主導し、2026年の田畑米保険プロジェクトの基本方針を決めた。BAACの顧客や登録小規模農家を対象に、政府とBAACが保険料を分担して負担し、農家自身の自己負担を抑える設計だ。事務局には6月中にBAAC理事会と米政策委員会(NBP)に提案するよう急ぎの指示が出された。タイの田植え期に間に合わせる狙いだ。
エルニーニョ・旱魃・突発洪水に備え、農家1人10ライまで補助
補助対象の上限は1人あたり10ライ(約1.6ヘクタール)で、零細農家が現実的に運営する規模に合わせた。背景にあるのが、2026年に強まるとみられるエルニーニョ現象だ。タイの主要産米地帯であるイサーン地方、北部、中部のチャオプラヤ流域は、旱魃と突発的な大雨が交互に襲うパターンが増え、収穫直前にすべての作付が流される被害も出てきた。今回の保険料補助は、零細農家を「次の作付けまで持ちこたえられる」状態に保つセーフティネットになる。
衛星画像で被害評価、7〜14日以内に賠償支払
支払の迅速化も今回のポイントだ。これまでタイの農業保険は被害発生後の現地調査に時間がかかり、補償金が農家の手元に届くまで数か月単位の遅れが出ることもあった。新しい仕組みでは、高解像度の衛星画像を用いて被害を判定し、最短7〜14日以内に賠償金を支払う。デジタル衛星データを政府機関と民間損保会社の間で連携する「統合データプラットフォーム」が運用基盤になる。
タイ米輸出と日本市場、旱魃が引き起こす価格変動への備え
タイは世界でも有数の米輸出国で、ジャスミンライス(カオホムマリ)は日本のエスニック食レストランや高級スーパーで定番だ。エルニーニョ年に旱魃と洪水が交互に来ると、収穫量が大きく振れて輸出価格が上下する。日本の輸入業者にとっても、タイ国内の保険制度が機能して農家が連続して作付けを続けられるかどうかは仕入れの安定性に関わる。在タイ日本人の食卓でも、米価の急騰は弁当店や食堂の値上げを通して影響が及ぶ。今回の保険プロジェクトは、農村政策にとどまらず東南アジアのコメ供給安定の基盤にも関わる動きだ。