タイの人民党(プラチャーチョン党、PCN)が擁立するバンコク都(BMA)知事候補チャイヤワット・サタワラウィチット博士(通称ジョー)が2026年5月8日、選挙公約の中核を発表した。「BKKを簡単に(กรุงเทพง่ายๆ)」をキャンペーンスローガンに掲げ、現行のBMA法改正による都の自主権限拡大、運河の公共交通利用、オンヌットゴミ処理場問題の最優先対処などを骨子とする。チャッチャート現知事の任期満了後、6月28日投票のBMA都知事選で人民党の主力候補として戦う構え。
5/8発表 「BKKを簡単に」キャンペーン
ジョー博士はBKKを「市民の時間を奪う街」と位置付けた。「人々は、街が良くなる、暮らしが楽になる、簡単になることを期待しなくなっている。それは諦めの結果」と語り、現状認識を共有することから政策の出発点を置いた。
人民党としては「4つの簡単」を柱とする政策パッケージで、市民の日常を支援することを目指す。同党は50人の市議会議員候補と党執行部を擁立しており、ジョー博士単独の戦いではなく党全体での首都攻略を狙う構図。
BMA法改正で都の権限拡大、ネガティブリスト方式へ
最も注目される構造改革は、現行のBMA法(พ.ร.บ. กทม.)の改正による都の権限拡大。現行法は「BMAができることをリスト化(ポジティブリスト)」する方式で、リストに記載がない権限はBMAが独自に行使できない構造。
ジョー博士の提案は、これを「禁止されていることをリスト化(ネガティブリスト)」する方式に転換すること。結果として、BMAは禁止されていない範囲で自由に政策を実施できるようになり、首都の自治権限が大幅に拡大する。タイの中央集権的な都市行政運営を大きく変える可能性を秘めた制度改革案。
運河を公共交通として再活用する都市計画
第二の目玉政策が、BKKに張り巡らされた運河の公共交通利用化。BKKは「東洋のヴェネチア」と呼ばれた歴史的経緯があり、現在も多数の運河網が残っているが、ほとんどが交通用途では使われていない。
ジョー博士の構想は、運河を本格的な公共交通(ボート・水上バス)として再活用し、地上の渋滞解消と低炭素移動の両立を目指す。実装には運河の浚渫・水質改善・船着場整備・ダイヤ運用の総合計画が必要となるが、東京の隅田川やバンコクのチャオプラヤ川などの先行事例を参考にしながら、本格的な水上交通網の構築を提案している。
オンヌットゴミ処分場問題は就任後の最優先課題
第三の柱として明言されたのが、就任後の最優先課題としての「オンヌットゴミ処分場問題」への取り組み。プラウェート区にあるオンヌットゴミ処分場は、長年周辺住民から臭気・煙害の苦情が寄せられてきた施設で、現職のチャッチャート知事も任期末に対策発表を行ったばかり。
ジョー博士は、現職の対策では不十分とみて、就任直後から本格的な改善に着手する姿勢を示す。在タイ日本人駐在員もスクムビット・オンヌット周辺に居住するケースが多く、ゴミ処分場の運営改善は生活の質に直結する政策課題。チャッチャート再選戦略との対立軸として、首都の生活問題への取り組み姿勢が注目される選挙戦の構図となる。