タイ中央銀行が住宅ローンの担保比率規制(LTV)を一段緩和する措置を1年延長すると発表した。期間は2026年7月1日から2027年6月30日まで。すべての契約、すべての価格帯で物件価格の100%まで融資可能となり、不動産市況の鈍化と在庫高水準を下支えする狙いがある。
タイ中銀がLTV緩和を1年延長、すべての契約で100%融資が可能
タイ中央銀行は5月8日、住宅ローンと関連融資にかかるLTV規制(Loan-to-Value、担保比率)の緩和措置を1年延長する案を公開協議にかけた。新しい期間は2026年7月1日から2027年6月30日まで。緩和期間中はすべての借入契約で、物件価格の100%まで融資できる状態が継続する。本来のLTV規制では2件目以降の住宅取得には自己資金10〜20%の積み増しが求められるが、緩和期間中はその要件が一律で外れる。
不動産市況の鈍化と在庫高水準、緩和継続で需要喚起
タイ中銀は今回の措置の背景として、不動産市況が依然として鈍化していること、未消化在庫が高水準で積み上がっていることを挙げた。コロナ禍後の住宅需要の回復が緩慢で、新築コンドミニアムの入居率も伸び悩んでいる。中銀は不動産産業を巡るサプライチェーン(鉄、セメント、家具、家電、内装など)が幅広い雇用を抱えていることから、規制緩和の継続で建設受注を下支えし、関連雇用を維持する判断をした。
在タイ日本人駐在員にも追い風、コンドミニアム購入のハードルが下がる
タイで働く日本人駐在員にとって、外国人として購入できるのは原則コンドミニアム(外国人保有比率49%以下)に限られるが、所得証明と労働許可があればタイの銀行から住宅ローンを組める。LTV緩和の継続で2件目以降のコンドミニアム取得時にも自己資金を厚くせずに済むため、買い替えや投資用購入を検討する駐在員には追い風になる。シーロム、スクンビット、サートン、トンロー、エカマイ、アソークなど日本人エリアの中古コンドミニアム市場でも、買い手が動き出す可能性がある。
ジオポリティクスとタイ景気、不動産が国内需要の下支え役
中銀の声明では「ジオポリティクス(地政学的圧力)」も緩和延長の理由として挙げられた。米中対立、ミャンマー国境情勢、米国関税政策などタイの輸出に逆風が吹くなか、国内需要の柱として不動産・建設業が果たす役割は大きくなっている。中銀は信用リスクや不動産バブルの懸念は引き続き監視するとしつつ、現時点では緩和を続ける方が経済全体にとってメリットが大きいと判断した形だ。タイ全体の不動産価格動向は今後1年、緩和継続の効果が出るかを占う節目となる。