タイ警察庁中央捜査局(CIB)の消費者保護警察課(ปคบ./PCB)が5月10日、サムットプラカン県内の違法ドリアン肥料倉庫を摘発し、約2万点の偽「有機肥料」を押収した。総額1000万バーツ(約4900万円)相当で、ベトナム人集団がオンライン経由で販売していた疑いが浮上している。
摘発を指示したのはコンクリット・ラートシットゥクン少将(PCB部長)で、現場はタナタト・シーピーパット警視(PCB第2課代行)、ウィサルット・バンナムケム警視、ポンパナー・クリーター警視補ら。農作物資材管理局の職員と合同で、サムットプラカン県の保管・配送拠点に踏み込んだ。
販売手法はSNSとEコマース複数プラットフォームを併用したオンライン直販。「高品質有機肥料」と銘打ち、対象作物としてドリアンのほか、ジャックフルーツ、コショウ、オレンジ、スイカ、マンゴーを掲げた。マーケティングはドリアンに特に集中しており、収穫期に合わせて「実を太らせる」「重量を増やす」「果肉率を上げる」「品質を向上させる」といった効能を訴求していた。
信頼性を装う手口として、SNS上では「農業の専門家」「ベテラン農家」を名乗る人物が商品を推奨する形式の動画・投稿を流していた。タイのドリアン農家にとって肥料の選定は収穫量と品質を左右する死活問題で、専門家の推薦という体裁を信じて購入する零細農家が後を絶たない構造を突いた手口と言える。
押収された約2万点の品物は、肥料原料の表示、製造ライセンス、有機認証の根拠が一切確認できず、農作物資材管理局が通常の有機肥料認定基準を全く満たしていないと判定した。商品が実際に農地に投入されれば、土壌汚染、収穫物への有害物質残留、輸出時の検疫違反などのリスクが連鎖する。
タイのドリアンは中国を最大輸出先とする巨大な輸出産業で、年間数百億バーツから1000億バーツ規模の貿易を生む。中国側は2025年以降、農薬残留とベトナム産ドリアンに混入したカドミウム問題を受けて検疫を厳格化しており、品質競争に勝ち残るためにタイ商務省は5月9日に未熟果の出荷停止を呼びかけたばかり。今回の偽肥料事件は、その品質管理の根本を揺るがしかねない。
同時期にプラチンブリ県では71歳の僧侶がドリアン詐欺の被害に遭った件も報じられた。供給側(生産者)と需要側(個人購入者)の両方で詐欺被害が拡大しており、タイのドリアン経済全体の信用毀損が進む懸念が浮上している。
在タイ日本人にとっては、ドリアン購入時に「政府認証マーク」「正規の輸出業者」を選ぶ意識がより重要になる。在留邦人の家庭でも家庭菜園・観葉植物用の肥料を市場やSNSで購入するケースが増えているが、価格に過敏になりすぎた選択は土壌・健康双方にリスクをもたらす可能性がある。