タイの寺院で火葬用の燃料が不足している。ある寺院の住職は「火葬に使うディーゼルが手に入らない」と訴え、参列者に対し「香典を持ってくる必要はない。その代わり燃料を持ってきてほしい」と異例の呼びかけを行った。
タイでは仏教式の葬儀が一般的で、火葬はほぼすべての葬儀で行われる。火葬炉はディーゼルを燃料とするものが多く、1回の火葬に約50〜100リットルのディーゼルが必要とされる。燃料不足が続けば、火葬そのものが行えなくなる事態に発展しかねない。
日本では火葬は都市ガスや灯油を使用する自治体運営の火葬場で行われるため、燃料不足の影響を受けにくい。タイでは各寺院が独自に火葬炉を運営しているため、燃料調達も寺院の自助努力に委ねられている。この構造的な違いが、燃料危機の「見えにくい影響」を生んでいる。
住職の呼びかけはSNSで広まり、「燃料危機がここまで来たのか」と驚きの声が上がっている。政府は石油備蓄の放出を命じたが、寺院や病院といった社会インフラへの優先供給は議論されていない。
タイ全土に約4万の寺院があり、その多くが火葬施設を持つ。燃料危機が長期化すれば、葬儀の執行に支障が出るだけでなく、遺体の保管という衛生上の問題にも発展する可能性がある。