シンブリー県バーンプトラ郡の寺院「ワット・ポートケオ・ノッパクン」の住職が、火葬用のディーゼルが入手できないとして「香典ではなくディーゼルを持参してほしい」とFacebookに訴えた。投稿は短時間でタイ全土に拡散し、燃料危機が宗教的な葬儀文化まで直撃している現実を浮き彫りにした。
住職の訴え
住職(チェンノーム・ロットフン師)はFacebookに次のように書いた。「『死んでしまえば苦から解放される』とは今は言えない。シンブリーでは燃料不足で亡くなった人も困っている。私は毎朝托鉢の後にディーゼルを探し歩いている。スタンドに行くと『在庫なし』、別のスタンドでは『携行缶には売れない』、別の場所では死亡診断書の提示を求められる、住職でないと売れないと言われる」
寺院では遺体の火葬が「ほぼ毎日」あり、1回の火葬に約50リットルのディーゼルが必要だ。しかし携行缶での購入はスタンドから断られるケースが相次ぎ、大量購入には書類や住職本人の来店を求められる。
タイの火葬とディーゼル依存
タイでは仏教式の葬儀が主流で、ほぼすべての葬儀は火葬で締めくくられる。全国に約4万か所ある仏教寺院の多くが独自の火葬炉(เมรุ)を持ち、地域の葬儀を執り行う。火葬炉の燃料はディーゼルが主流で、「汚染防止型炉」でも1遺体あたり約50リットル(2,500〜3,000バーツ相当)が必要だ。
日本の火葬場は多くが都市ガスや重油を使う自治体運営施設だが、タイでは寺院が個別に燃料を調達する分散型モデルだ。燃料危機の影響が「見えにくい場所」まで及んでいることを、今回の投稿は示した。
政府の優先供給策
政府は医療機関・農業・漁業への燃料優先供給を打ち出したが、寺院や葬儀施設への対応は明確にされていなかった。今回の投稿が注目されたことで、商務省と石油会社が寺院向けの携行缶販売ガイドラインを緩和する対応を取った。
全国4万寺院への波及
シンブリー県だけの問題ではない。同じような状況がイサーン(東北部)や北部の農村の寺院でも起きている。タイ全体で見ると、毎年約50万人が死亡し、その大半が寺院で火葬される。燃料不足が長期化すれば、遺体の保管と衛生管理に深刻な問題が発生しかねない。