タイ南部プラチュアップキーリーカン県のパーム油産地で、燃料危機が農家を直撃している。22日の報告によると、農家のキッチャ・チャンタラー氏は「燃料がなくてパームが収穫できず、熟した実が木から落ちて無駄になっている」と訴えた。
パーム農家の収入減は二重の構造だ。まず燃料不足と高騰で収穫トラクターや運搬車が使えなくなり、収穫作業自体が止まった。収穫できないと農場主への委託収入が入らない。次に、政府の輸出停止措置で国内の買い取り価格が1kgあたり6〜8バーツ台に下落し、採算が悪化した。
プラチュアップキーリーカン県はタイ随一のパーム油産地で、全国生産量の約10〜15%を担う。パームの実は熟すと急速に腐敗するため、収穫後24〜48時間以内に搾油工場に届けなければならない。燃料不足で輸送が滞れば収穫そのものを諦めざるをえない。落果した実は搾油に使えず、農家の収入はゼロになる。
タイのパーム油産業は全国に約200万ライ(320万ヘクタール相当)の農地を持ち、農家数十万戸の生計を支えている。パーム油は食用油・石鹸・バイオディーゼルの原料として国内外で大きな需要がある。政府の輸出停止は食用油価格の安定を目指したものだが、産地農家の収入を犠牲にする副作用が出ている。
燃料危機と農産物価格安定策が矛盾する形で重なり、農家が板挟みになっているパーム産地の実情は、タイの農政が抱える構造的な課題を示している。
