タイのエネルギー省は3月23日、ディーゼルおよびガソリンの小売価格を現行水準で維持し「タイの燃料はASEAN諸国より安い」と発表した。エネルギー省副局長のワッチャリン・ブンリット氏によると、ドバイ原油が1バレル158ドルに達した水準でも石油基金による補填で価格を抑えているという。
実際の価格と「維持」の意味
3月23日時点のタイの小売価格は、ディーゼルが31.14バーツ/L、ガソホール E10が34.02バーツ/Lだった。エネルギー省は補填後の価格を「維持」しているとしているが、この後数日で6バーツの一斉値上げが実施された経緯がある。「価格維持」の発言は短期的な状況に基づいたものだったことになる。
原油危機前の水準と比較すると、ディーゼルは約15バーツ、ガソホールも10バーツ以上高い水準にある。石油基金の補填がなければさらに高騰していたことになる。
地方での実態との乖離
地方からは政府発表と現場のギャップを指摘する声が相次いだ。ブリーラムやルーイなどの地方県では給油所が一時的に在庫切れとなり、長蛇の列ができた。エネルギー省が「備蓄十分で不足はない」と発表した翌日に給油所が閉鎖されたケースも報告されている。
元財務大臣カーン氏は「なぜ備蓄があるのに末端まで届かないのか。流通の問題だ」と政府を追及した。NIDA世論調査では国民の44%が「政府の燃料備蓄説明を信じない」と回答しており、政府の発言と国民の不信感の間に大きな乖離があった。
石油基金の仕組みと限界
タイの石油基金は平常時から各燃料の販売額から一定額を徴収して積み立て、原油高騰時には差額を補填する仕組みだ。しかしホルムズ海峡封鎖後の原油急騰は想定を大幅に超えており、一時は日々1,200億バーツを超える補填が行われていた。この速度で消費されれば資金が枯渇するのは時間の問題だった。