アヌティン首相は2026年3月、ナラティワート選出の野党議員への銃撃事件を強く非難する声明を発表した。「国家の代表者への攻撃は民主主義そのものへの攻撃だ」と述べ、徹底した犯人捜査と被害者支援を指示した。
事件はナラティワート県で発生した。同県はタイ深南部(パッタニー・ヤラー・ナラティワートの3県)の一つで、分離独立派の武装勢力による暴力事件が2004年以降継続している地域だ。議員への銃撃は過去にも発生しており、政治的な威圧・暗殺を意図した可能性が疑われた。
タイ深南部ではマレー系ムスリム住民が多数を占め、分離独立を訴える武装組織(BRN・PULO系など)が断続的にテロ・爆発・銃撃事件を起こしている。政府と武装組織の間の和平交渉は2000年代以降断続的に行われてきたが、完全な停戦には至っていない。
議員・首長・公務員・軍警察への攻撃は南部紛争の一形態として続いており、「民主主義的なプロセスの担い手を標的にすることで統治を不安定化させる」狙いがあるとされる。今回の事件もこのパターンに当てはまる可能性が高い。
タイ政府は年間数百億バーツの予算を深南部の治安維持・開発・対話促進に投じているが、根本的な解決には至っていない。アヌティン首相の声明は政治的に素早い対応として評価される一方、実質的な再発防止への道筋は依然として複雑だ。

