タイ政府が、国民500万人に主要な生成AIを使えるようにする「TH-AIパスポート」という事業を進めている。ChatGPTやGemini、Claudeなど14社24種類のAIに、1人あたり月およそ27バーツ(約130円)で12か月間アクセスできるという。一方で野党は、その巨額の費用や調達の透明性に疑問を投げかけ、政治論争になっている。
14社24種類の生成AIに月27バーツでアクセス
デジタル経済社会省が進めるTH-AIパスポートは、国民500万人を対象に、生成AIへのアクセスを提供する事業だ。対象には、ChatGPT、Gemini、Grok、Claude、タイ製のTyphoonなど、14社24種類のAIが含まれ、有料の上位プランを12か月間使えるとされる。あわせて、AIの研修やコンペ、タイ語の大規模言語モデル「ThaiLLM」開発のためのデータ収集なども行う。
費用は1人月27バーツ、総額16億バーツ
費用は1人あたり月およそ27バーツ。契約の総額は16億2,100万バーツで、「TH」という共同事業体が落札した。デジタル経済社会相のチャイヤノック・チットチョブ氏は、同種の有料サービスが従来は月600バーツほどかかっていたとして、今回は格安だと説明する。財源にはデジタル経済社会開発基金が使われ、閣議の承認が要らない仕組みとなっている。
野党が調達の透明性に疑問
これに対し、野党・民主党党首のアピシット・ウェチャチワ氏は、巨額の費用や調達の過程、監督体制をより深く精査すべきだと主張している。調達に不正がなかったかを調べるよう求めた。デジタル経済社会省は、調達は電子入札で行われ法令に完全に従ったと反論し、「あらゆる段階で精査を受け入れる」としている。
「国民に生成AIを配る」タイの狙い
政府は、低コストで国民のデジタル能力を底上げする取り組みだとアピールする。タイ語でAIを使える環境を広げ、自国のAIモデルの育成にもつなげる狙いだ。国民にデジタルツールを行き渡らせるという発想は、これまでの給付アプリなどにも通じる。500万人に生成AIを届けるこの事業が、費用に見合う成果を生むのか、そして調達の透明性を確保できるのかが問われている。



