5月19日のタイ閣議が、観光・スポーツ省が提出していた「ビザ免除60日滞在制度の廃止」を正式に承認した。同日朝にThaigerが第一報を伝えたあと、各紙が政府広報室の発表を引用して報じている。観光相が5月11日に方針を表明してから1週間と1日で閣議決定にこぎ着けた、異例のスピード対応。
廃止後の新滞在日数は「概ね30日、国籍によって異なる」とされ、各国別の新ビザカテゴリーは後日改めて発表される。施行日も現時点では未確定で、政府広報室は「外務省・観光スポーツ省と協議の上、近く施行細則を告示する」と説明している。
何が決まり、何が決まっていないか
5月19日の閣議で正式承認された事項は次の通り。
一方、まだ未確定なのは次の通り。
- 具体的な施行日
- 国別の新滞在日数(30日に統一されるのか、国により15日・30日・45日と差を付けるのか)
- 既に60日滞在中の旅行者への経過措置
- ビザ免除対象国数の最終リスト(93→57ヶ国案は審議中)
地元紙Khaosod・Bangkok Postの報道では、施行日は「早ければ6月内、ピークシーズン前の10月までを目処」という観光相の発言を引いていて、6〜10月のどこかで切り替えが入る可能性が高い。
5月11日方針表明からの早送り
前回記事で取り上げた通り、5月11日にスラサク観光・スポーツ相がタイ航空産業連盟の会合で「60日→30日に巻き戻したい」と方針を表明したのが今回の動きのスタートだった。それから10日足らずで、
- 観光・スポーツ省内で具体的提案書まとめ(5月12〜14日)
- 外務省との協議(5月14〜18日)
- 閣議提出・承認(5月19日)
というスケジュールを駆け抜けたことになる。タイ政府の大型政策変更としては、明らかに高速の合意形成で、観光警察・地方自治体・観光業界からの「闇ビジネス放置への怒り」が後押しした構図と読める。
旅行者・在住者への実務インパクト
今回の閣議決定で、「いずれ施行される」のは確定した。残る不確実性は「いつから」「具体的に何日になるか」「どの国が対象か」の3点に集約された。
日本国籍の観光客にとっては、施行後は最大でも30日前後の滞在になる前提で旅程を組む必要が出てくる。30日を超える滞在は、出発前にタイ大使館で観光ビザ(TR)・特定目的ビザ(STV)を取得するか、入国後にイミグレーション窓口で延長申請(1,900バーツ)が必要になる。
これまで「60日あるからゆっくり行ける」という感覚で渡航計画を立てていた個人旅行者・ワーケーション利用者は、6月以降の渡航スケジュールから前提を変えた方が安全だ。長期出張の場合は、Non-Bビザ(就労)・スマートビザ・LTRビザの取得を早めに動いた方がいい。
在タイの長期滞在ビザを持つ日本人にとっては、今回の決定そのものは「ビザ免除入国」の話で直接影響しない。ただし、検討委員会(パコーン副首相座長)が「全ビザ種別を横断審査」と公言している以上、リタイアメントOビザ・LTRビザ・エリートビザの条件見直しが連動する可能性は依然として残る。
なぜタイ政府はここまで急いだか
タイのフリービザ60日は2024年7月に「30日→60日」へ拡大された制度で、当時は中国からの観光客回復の遅れを補う狙いだった。だが期待した中国観光客の戻りは限定的だった一方で、東欧系・ロシア系・中華系の「観光客装い・闇事業者」がパタヤ・プーケット・チェンマイで急増。今年に入って、
- パタヤのプールヴィラで中国系ゾンビドラッグ製造工場摘発(直近で5/19にも)
- バンコクの中華系銀行詐欺集団摘発
- プーケットのロシア系不動産仲介・ガイド業の違法就労摘発
など、観光客偽装を悪用した事業者の摘発が相次いだ。観光警察出身の議員グループからも「ビザ免除60日が引き金になっている」との指摘が出て、観光業界の声と一致した。閣議として「観光振興優先」より「治安優先」に舵を切らざるを得なくなった、という整理がいちばん筋道が立つ。
日本人在住者・旅行者がいま確認しておくこと
施行日・新滞在日数の確定発表は数週間〜数ヶ月かかる見込みだが、今のうちにやっておけることはいくつかある。
6月以降の渡航予定があるなら、旅程の最大滞在日数を確認しておく。30日以内なら影響はないが、30日を超える予定なら事前のビザ取得準備が必要になる。すでに60日滞在中の人は、現在のスタンプ表示日数を確認しつつ、出国予定日が経過措置の範囲かどうかは細則発表を待つ形になる。Non-Bビザ・LTRビザを検討している層は、早めに領事館・タイ大使館に問い合わせるのが安全だ。申請者集中で処理待ちが長期化する可能性がある。
まとめ
5月19日の閣議決定で、60日フリービザ廃止は「方針」から「確定」に変わった。施行日・国別細則は未定だが、夏のピークシーズン前の切り替えを目指す動きが続く。日本人旅行者・短期出張者は、6月以降の旅程からスタンスを変える必要が出てきた。続報を追う。


