2026年5月10日午後2時15分、タイで「最も美しい牙を持つ象」として国民的人気だったオス象「プライ・トンバイ」が53歳で逝去した。死亡場所はスリン県バンタクランの象村で、地元のクイ民族(象使いコミュニティ)が深い悲しみのなか別れを惜しんだ。トンバイは2.10mに達するタイ最長級の象牙を持ち、タイの国民的ビール「Chang」のテレビCMの主役象としても広く知られていた。
1973年バンコク生まれ、スリン県で「家郷帰還プロジェクト」の象徴に
トンバイ(Plai Thongbai)は1973年11月11日にバンコクで生まれ、近年は「象たちを故郷に戻しスリン県を発展させよう」プロジェクトの下、スリン県のバンタクラン象村で暮らしていた。飼育者は女性マフート(象使い)のラン・サランガム氏で、地元では「ポーヤイ・トンバイ(トンバイおじいちゃん)」の愛称で親しまれてきた。
タイ最長級の2.10m象牙、Changビール広告の「タイ象界トップ」
トンバイの最大の特徴は、地面に届きそうなほど長い2.10mの象牙で、タイ国内で最も長い象牙を持つ象とされた。その威風堂々とした姿はChangビール(Chang = タイ語で「象」)のテレビCMにも採用され、タイ国民にとって「Changのあの象」として広く浸透していた。1970年代に生まれて約半世紀、タイの象界のトップとして君臨し続けた存在だ。
死の数日前に記念像の象牙が大雨で折れる、地元民は「神様の予告」
トンバイの逝去には、地元民が「神様の予告だった」と語る奇妙な前兆があった。死亡の十数日前、スリン県にあるトンバイの記念像の象牙が大雨で折れる事故が起きていた。地元の人々の間では、「神様が王者を森に帰す合図を出していた」という解釈が広がっている。タイ東北部のクイ民族は象と人間が共生する独自の文化を持つコミュニティで、象の死は単なる動物の死ではなく、コミュニティ全体の喪失として受け止められている。
SNSで53年の伝説に惜別、観光地バンタクランの世代交代
トンバイの逝去にあたり、タイのSNSでは「あの世でも自由に走り回ってほしい」「53年間ありがとう」といった惜別メッセージが多数投稿された。観光客がスリン県バンタクランの象村を訪れる目的の一つは、トンバイのような長い象牙を持つ象を直接見ることだった。タイ象のレジェンドが去ったことで、バンタクランは世代交代の時期を迎えることになる。