タイ・ピチット県ワンサイプン郡ノンプラーライ町の米農家チャクラパリット・バンチャートキット氏(59歳)が5月12日、現地メディアの取材に対して籾米の出荷価格が1キログラム4.50〜5バーツまで暴落したことを語り、「これまで積み重ねた借金を返すために田を売るしかない」と窮状を訴えた。「収穫期の始まりでこの価格なら、中盤から終盤にはいくらまで下がるのか」と農家全体に広がる絶望感を明かした。
肥料代1.3倍で赤字が確定
問題をさらに深刻にしているのが生産コストの上昇だ。田植え期米(นาปรัง)の1ライ(1,600㎡)あたりの投資コストは6,000〜7,000バーツで、使用する化学肥料が1袋800〜900バーツから1,200バーツへ約33%値上がりした。ロシア・ウクライナ戦争後の原料高止まりや海運費の上昇が末端価格に響いている。これに燃料費の上昇も重なり、4.50〜5バーツの買取価格では採算が取れない計算になる。
収穫期と品種による価格差
今回問題となっている田植え期米は11月〜4月に植え付けて3月〜7月に収穫する二期作品種で、灌漑が必要な分コストもかかる。雨季米(1kg 6〜8バーツ)と比べると30〜40%も安く設定されており、市場での評価が低い。チャオプラヤ川流域の穀倉地帯であるピチット県は人口約53万人のうち約34万人が農業に従事しており、米価の下落は地域経済を直撃する。
「政府はヘルプなし、問題ばかり」
チャクラパリット氏は政府への不満も口にした。タイの米価担保融資(ジャムナム)プログラムの予算縮小、肥料・燃料補助金の縮小が続く中、農村部では「政府に見捨てられた」という声が高まっている。国際米市場ではインドやベトナムが競争力を強め、タイ米の輸出優位性は低下している。
田を売ることはタイの農村社会で「祖先の遺産を手放す」「家族としての敗北」とされ、心理的苦痛が大きい。チャクラパリット氏のような農家が田売却を口にする状況は、農村部の厳しい現実を示している。

