タイ政府の経済刺激策「タイ助けタイプラス(ไทยช่วยไทยพลัส)」が5月25日から新規登録を開始し、6月1日から4か月間にわたって毎月1,000バーツ(約4,900円)の補助が支給される。プログラムは過去の人気施策「コンラクルン(半額補助)プラス」と「福祉カード(バットルクンチョン)」を統合したハイブリッド型で、コンラクルン側は政府が60%・利用者が40%負担、福祉カード側は政府が100%負担。対象は最終的に3,000万人規模、フェーズ1で福祉カード保有者1,325万人が6月から先行受給する。総予算は2,000億バーツ(約9,800億円)で、政府が緊急借入勅令で確保した4,000億バーツの一部から拠出される。
プログラムの基本構造は明快だ。
| 項目 | コンラクルン側 | 福祉カード側 |
|---|
| 政府負担 | 60% | 100% |
| 利用者負担 | 40% | なし |
| 対象者 | 一般国民 | 福祉カード保有者 |
| 月額 | 1,000バーツ | 1,000バーツ |
| 期間 | 4か月 | 4か月 |
| 累計 | 4,000バーツ | 4,000バーツ |
フェーズ分割の運用は次の通り。フェーズ1(6-7月)では福祉カード(バットルクンチョン)保有者1,325万人が自動的に毎月1,000バーツの給付を受ける形でスタート。フェーズ2では一般国民への「コンラクルンプラス」型の登録が本格化し、最終的に3,000万人規模の利用者を目指す。タイ国民の約半数が何らかの形で本プログラムから恩恵を受ける計算となる。
財源の構造は政治的に微妙な状況だ。総予算2,000億バーツは、政府が緊急借入勅令(พ.ร.ก. กู้เงิน 4 แสนล้านบาท)で調達する4,000億バーツの一部に位置付けられる。しかし野党(民主党+国民党)が5月11日に4,000億バーツ勅令を憲法裁判所に違憲審査要請しており、判決次第では同プログラムの実施そのものが揺らぐ可能性がある。
過去のコンラクルン(コロナ禍時代の経済刺激策)は、(1)2020-2022年に複数フェーズで実施、(2)累計予算1兆バーツ超、(3)利用者・店舗から圧倒的支持、という大成功を収めた。タイ国民にとって「コンラクルン」は経済刺激策の代名詞となっており、今回の「タイ助けタイプラス」もその系譜を継ぐ施策として高い注目を集めている。
商店側のメリットも大きい。屋台・小規模店舗・地方コンビニ・薬局・市場業者などが対象店舗として登録すれば、(A)毎月数千〜数万バーツの追加売上、(B)デジタル決済の普及(タオパオアプリ/เป๋าตัง経由)、(C)新規顧客の獲得、を実現できる。タイ全国の小規模事業者にとって、6月以降の売上補強策となる。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、本プログラム自体は対象外(タイ国民のみ)だが、波及効果には注目すべきだ。(1)屋台・市場の混雑増加(給付金で家族が外食・買い物に出る)、(2)国内消費の刺激でインフレ圧力、(3)バーツの為替動向に影響する可能性、(4)小規模店舗のレジ対応にデジタル化波及、などが考えられる。日本人が利用する商店・レストランでも、タイ人のキャッシュレス決済の比率が向上することで、利便性は改善される方向だ。
経済への波及効果はマクロ的にも大きい。4か月で3,000万人×4,000バーツ=1,200億バーツ規模の購買力が市場に追加投入される計算で、タイ国内GDPの0.5-0.7%押し上げ効果が見込まれる。観光業の苦境(4月外国人観光客-7%)の中で、内需型の経済刺激として政府の戦略的価値は高い。