5月11日午後5時頃、タイ中部チャチェンサオ県ムアン郡タイカイ地区の村裏の池で、兄弟2人(9歳と8歳)がヘルメットを取ろうとして溺死する痛ましい事故が起きた。事故の状況は、その場にいた6歳の友人男児の証言で明らかになった。3人で池の浅瀬で遊んでいたところ、池中央に浮かんでいたヘルメットを見つけて2人の兄弟が泳いで取りに出たが、深さ2メートル超の地点で水深に飲まれて沈没。泳げた友人だけが脱出して大人に通報する形で発見された。両親は離別しており、祖母が育てていたという家族背景も浮き彫りになった。
被害者の兄弟は2人とも姓トゥプティアントン。兄ナット(チョーク氏)9歳、妹ガット(ノットチャヤ氏)8歳の兄妹で、村裏の池での水遊びは祖母から禁止されていた。事故が起きた池は村の生活圏内にあるが、水深2メートル超の危険水域で、水泳能力が未熟な子供にとっては致命的な深さだった。
事故の経緯を物語る6歳の目撃者の証言は重い。「朝から3人で池の浅瀬で遊んでいた。池中央にヘルメットが浮いているのを見つけて、2人がそれを取ろうと泳いで出た。途中で深い場所に入って、目の前で沈んでいった」。6歳の友人男児自身は泳ぎが多少できたため、池から脱出して近所の大人に通報。通報を受けて救助隊と警察に連絡が行き、捜索が開始された。
救助作業も困難を極めた。村裏の池は深さ2メートルを超え、視界も悪い泥水だったため、救助隊は長い棒を使って池底を探る伝統的手法で捜索を実施。最終的に兄弟2人の遺体は発見されたが、すでに息はなかった。
祖母(伯母スタティップさん34歳の証言)の悲嘆は深い。両親が離別した後、祖母が兄弟2人を育てており、この池での水遊びは「絶対に禁止」していた。事故発見後、祖母は遺体を抱きしめて「孫の面倒を見きれなかった」と自責の念に駆られながら泣き崩れたという。タイ社会において、両親離別後の祖父母養育は珍しくないパターンだが、その重圧と悲劇が同時に現れたケースとなった。
タイの子供溺死事故は構造的問題を抱えている。タイ公衆衛生省の統計では、子供(1-14歳)の事故死原因の第1位は溺死で、年間1,000人前後が水関連事故で死亡している。特に農村部・郊外の池・運河・河川での溺死が多く、(A)水泳教育の不徹底、(B)危険水域の柵設置不足、(C)大人の監視の隙、(D)泳ぐ友人による緊急時の救助困難、などが重なる構造だ。
直近の類似事故では、ラヨーン・プルアクデーン貯水池で強風が3少年を深い水溝へ突き落とし、8歳が溺死、コラート・ノンタイ運河で39歳男性「暑い」と単独入水→4m深に溺死、サラブリ・ムアクレックで観光中の40歳女性が大枝下敷きで死亡など、5月の連続雨で水関連の死亡事故が連続している。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、子育てにおける水辺の警戒を再認識する事件となる。(1)地方部・郊外の池・運河は「禁止」を絶対徹底する、(2)水泳教育を子供のうちに受けさせる(タイ国民の水泳能力率は日本より低い)、(3)監視されない場所での子供だけの水遊びを認めない、(4)緊急時の通報先(救助隊・警察)を子供にも教えておく、などの基本対策が改めて重要となる。5月から本格化する雨季・夏期において、家庭内の水辺ルールの再確認が推奨される。