5月11日、タイ・チョンブリ県パナスニコム郡バーンチャン地区の建設現場で、30歳の女性労働者プハンニダさん(仮姓)が排水管設置工事の四角い掘削穴(幅約1m×長さ1.2m)に転落し、コンクリートから突き出ていた約30cmのD型異形鉄筋(鉄筋径20mm前後)3本が臀部に刺さるという凄惨な事故が発生した。救助隊「サワーンヘート」と緊急医療チームは、油圧切断器具で鉄筋を切断しながら、クレーン車で被害者の体を支え続けるという慎重な作業を実施し、最終的に救出に成功。被害者は重傷だが命に別状はないと伝えられている。
事故は5月11日、ターンチャーン区モー3集落の住宅地区道路の排水管布設工事現場で発生。現場は将来の住宅街道に埋設する四角形コンクリート点検桝(マンホール)の周辺で、地面には掘削した土が周囲に山積みされ、コンクリート躯体からは長さ約1フィート(30cm)の異形鉄筋(D型異形鉄筋/เหล็กข้ออ้อย)が3本立ち上がった状態だった。プハンニダさんが何らかの原因で転落、突き出していた鉄筋3本が臀部に刺さり、身動きできない状態に陥った。
救助作業は時間との戦いとなった。サワーンヘート救助隊と緊急医療チームは現場到着後、(1)プハンニダさんの体を動かすと出血量と外傷が悪化するリスク、(2)鉄筋を引き抜くと出血が止まらないリスク、を考慮し、現場で鉄筋を切断する方針を採用。油圧切断器(カッタースプレッダー)でコンクリート側の鉄筋を切り離し、同時にクレーン車で被害者の体を物理的に支え、3本の鉄筋を体に刺したまま病院に搬送する手順を取った。
タイの建設現場安全管理は構造的問題を抱えている。今回の事故現場は、(A)鉄筋の先端が露出した状態で放置、(B)周囲に保護バリアやマーキングなし、(C)穴の周辺に転落防止柵なし、と複数の安全基準違反が見られる。タイ労働省が義務化している建設現場の安全管理基準(プロジェクト規模別)では、危険区域への第三者立入禁止と鉄筋先端の保護キャップ装着が求められるが、住宅街の小規模工事では遵守率が低い。
類似事故はタイ各地で頻発している。地方の住宅街道路工事・排水管工事・建設現場での「鉄筋に串刺し」事故は年間数件レベルで発生し、被害者は労働者本人だけでなく通行人・子供にも及ぶ。直近ではシーラチャーで強風で鋼鉄倉庫骨組みドミノ倒壊・建設作業員2人重傷、サラブリ・ムアクレックで観光中の40歳女性が大枝下敷きで死亡など、建設・自然災害に絡む死傷事故が連続している。
医療チームは現場で初期処置を実施し、鉄筋を体に刺したまま病院に搬送。手術室で外科チームが鉄筋を抜く手術を行うことになる。臀部から突き刺さった鉄筋の場合、(1)大腿動脈・坐骨神経の損傷有無、(2)骨盤骨折の有無、(3)腹腔内臓器への到達深度、が予後を左右する。鉄筋径20mm前後・刺さった長さ30cm前後ということから、相当深く到達している可能性が高く、外科処置の難易度は極めて高い。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、住宅街での散歩・子供の自転車遊び中に注意すべき現実だ。タイの住宅街・新規造成エリアでは、(1)夜間照明不足の工事現場、(2)転落防止柵のない掘削穴、(3)鉄筋の露出が放置された状態、が日常的に見られる。子供や高齢者を連れた散歩では、新興住宅街・施工中区域・夜間の道路工事区域を避けるのが安全策となる。雨季に入ると掘削穴に水が溜まり、視認性が悪化することも警戒すべき点だ。