タイ東北部ナコンラチャシマ県(コラート)の歩道橋で5月11日午前3時19分、31歳の女性が交際相手とのケンカでストレスを抱え、橋上から身を投げる寸前まで行動を進めていたところを、ナコンラチャシマ警察署の巡回警察官が機転と勇気で救出した。警察官の胸装着カメラ(Body-Worn Camera/BWC)が決定的瞬間を記録し、緊張感のある救出の様子がタイ国民の関心を集めている。
事案の現場はコラート市ナイムアン区のモハニカル技術職業大学(วิทยาลัยเทคโนโลยีช่างกลพณิชยการ)前の歩道橋。ナコンラチャシマ警察署の巡回チームがミットラパープ通り(タイ屈指の幹線道路)に臨時検問所を設置していたところ、酔ったような状態で泣きながら歩道橋に上る女性の姿を発見した。
女性は橋の手すりを越え、橋の向こう側に座って足をぶら下げる体勢を取った。下を通る車両が見える状態で、いつ飛び降りてもおかしくない危険な状況。警察官は冷静に女性に声をかけ、対話を始めた。会話の中で、女性が交際相手とケンカした直後で、極度のストレスと飲酒の影響で衝動的に行動していたことが分かった。
警察官の救出の決め手は、対話で女性の注意を引きつけ、警戒心が緩んだ瞬間を見計らって突進し、引き戻すという技術だった。Body-Worn Cameraがこの瞬間を捉えており、警察官の機転と判断力、そして女性の命を救った勇気が映像から伝わる。女性は無事に保護され、医療機関での精神的ケアを受けることになった。
タイ警察のBody-Worn Cameraは、近年導入が進められている装備で、警察官の業務透明性向上、住民との衝突防止、決定的瞬間の証拠化など複数の目的を持つ。今回のケースは、Body-Worn Cameraが「警察の業務評価」だけでなく「人命救助の決定的記録」としても機能する好例となった。
タイ国内の自殺・自殺未遂は依然として深刻な社会問題で、特に20-40代の女性で、恋愛・家庭問題が引き金となるケースが多い。WHOの調査でも、タイの自殺率はASEAN諸国の中で比較的高い水準にある。コロナ禍以降は経済的ストレスも複合的要因として加わり、地方・首都圏を問わず歩道橋・ビル屋上からの飛び降り未遂は年間数百件規模で発生している。
直近では同じ5月10日、コラート・ノンタイ運河で39歳男性が単独入水で溺死、ラヨーン・プルアクデーン貯水池で強風による少年溺死など、タイ各地で水死事故が連続。今回の事案は警察が間一髪で命を救った好転換点として記憶される。
タイの自殺予防ホットラインは「Samaritans of Thailand」(02-713-6793/英語可)、「Department of Mental Health」(1323/タイ語)が代表的。在タイ日本人駐在員の家族・知人にメンタル不調の兆候が見られた場合は、これらの相談窓口の利用を検討する価値がある。