タイ警察庁特殊捜査局(CIB)が5月11日、15年前にトラン県で発生した「妻が夫の殺害を依頼した事件」の最後の実行犯であるアルン氏(通称「ラム・ナヨン」、42)をナコンシータマラート県チャルームプラキアット郡チエンカオ区の番地不明の借家で逮捕した。これで15年に及ぶ事件が完全に決着。共犯3人はすでに裁判所が死刑・無期懲役判決を下しており、唯一逃亡を続けていた最後の容疑者の身柄確保となった。
逮捕を指揮したのは、パッタナサック・ブパスワン少将(CIB部長)。実行部隊はタナワット・ヒンヨキン警視(CIB第5課)とテーラポン・コンキアオ警視補が率いた。アルン氏には、トラン県裁判所が2011年2月25日に発出した逮捕令状(J.63/2554およびJ.61/2554)が出されており、罪状は「共謀殺人未遂」「共謀計画殺人」「許可不可能な銃火器・弾薬の所持」「公共の場での銃携帯(無許可)」の4件。
事件の詳細は、トラン県内で15年前に妻が夫の殺害を企図し、複数の実行犯を雇って組織的犯罪として遂行されたもの。共犯3人はすでに裁判所が判決を下し、死刑1人・無期懲役2人の罪が確定済み。今回逮捕されたアルン氏は犯行に使用されたM16ライフルの実行犯と見られ、犯行後15年にわたってタイ南部各地を転々としながら逃亡を続けていた。
捜査の決定的な手がかりについては未公表だが、CIBの長期追跡技術と、アルン氏が同一地域内で身を潜める習性から、最終的に居住地が特定されたと見られる。タイの逮捕令状は時効性のあるものと無期限のものがあり、殺人罪については時効が無いため、15年後でも逮捕・起訴が可能となる。
タイの「夫婦間殺人事件」は社会問題として根深い。経済的依存・家庭内暴力・財産相続の利害・恋愛関係の三角関係などが動機として頻発する。妻が他の実行犯を雇うパターンは、家庭内殺人の中でも特に計画性が高く、組織犯罪との接点を持つ事例として警察が重点的に追跡する類型だ。
同じ5月10日、タイ西部ペッチャブリでは10代男が恐喝失敗からミャンマー人2人を刃物で襲撃、ウボンラチャタニで41歳薬物息子が73歳母親を斧で殺害、サムプラカン廃屋で60日経過の白骨遺体発見など、タイ各地で殺人事件・遺体発見事案が連続報道されている。
タイ在住の日本人駐在員にとって直接の関連は薄いが、「タイの裁判は時効が極端に長い」「殺人事件は逃亡先を特定して何年でも追跡される」という法執行の実態を示す好例として読み取れる。タイで何らかの紛争・契約トラブルに巻き込まれた場合、和解で済まされた案件であっても法的記録は数十年残ることを念頭に置きたい。