タイ東北部ナコンラチャシマ県(コラート)ノンタイ郡ダンチャーク区バーン・ノンクラサン地区を流れるラム・チェンクライ運河で5月10日、39歳の男性が「暑い」と言って単独で入水した直後に水深約4メートルの底に溺死した。友人と地元住民が「危ないから入るな」と複数回警告したものの、男性は「ナコンパノムでは普通に泳いでいる」と聞き入れず、ものの数分で姿を消したという。フック31救援隊の潜水チームが約10分の捜索で遺体を発見した。
事案を扱ったのはノンタイ警察署。ノンタイの地域に拠点を置くフック31救援隊(タイ全土で活動する民間救援団体ホークの一支部)が水中捜索チームと専用の潜水機材を投入して捜索を実施。約10分で水深4メートルの川底から遺体を引き上げた。死亡が確認されたのはナコンパノム県出身のティーラユット氏(39)で、コラート県内で就労中、週末を友人宅で過ごしていた。
事故の経緯は痛ましい。彼は週末を友人の家で過ごしている最中、「暑い」と何度もこぼし、近くの運河で水浴びを始めようとした。同行していた友人や地元住民は「ここの水深は4メートル以上ある、危ない」と複数回引き止めた。それでも彼は「ナコンパノムの川でいつも泳いでいる」と笑って単独で水に入り、しばらくしてから姿を消した。住民が異変に気づいて救援隊を呼んだ時には、すでに手遅れだった。
タイの5月は1年で最も暑い「夏季の終わり」と「雨季入り直前」の境界で、日中の体感温度が40度を超える日も多い。タイ気象局TMDも5月10日に不安定気象警報の最終号を発表し、同時にエルニーニョの影響で5-7月の高温が長期化する見通しを警告している。「暑くて耐えられない」という心理状態が、判断力を鈍らせる典型的な季節と重なった事故と言える。
タイの内陸部の運河(クロン)は、見た目以上に水深がある場所が多い。ラム・チェンクライ運河のように4メートル超の深さがあると、泳げる人でも疲労・足のつり・水温差・水流などの予想外の要因で溺死する確率が一気に上がる。地元住民の「危ないから入るな」という警告は、長年の経験に基づくもので、軽視すべきではない。被害者が「ナコンパノムでは普通に泳いでいる」と言ったのは、出身地の慣れた川との違いを過小評価した典型例だ。
タイ全土の溺死事故は年間3000件規模で、特に5月の暑期に集中する。多くは飲酒との複合、単独入水、深さの過小評価が要因。タイ警察と災害対策局は毎年「夏季の運河・湖・ダムでの水浴び禁止」を呼びかけているが、住民の自発的判断に頼る部分が大きく、徹底化には限界がある。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっても、子供の夏休みの川遊び・プール遊びは要注意の時期だ。タイのリゾートホテル・コンドミニアムのプールは比較的安全だが、自然環境の川・湖・運河での水遊びは、ガイド付き・地元住民の同伴・救命具着用が原則。子供を連れた休日のドライブで「ちょっと暑いから水遊び」と立ち寄るような場面では、深さ・水流・救援アクセスの3点を必ず確認する習慣が必要となる。