タイ商務省国際貿易局が5月10日、2026年第1四半期(1-3月)のタイ米輸出統計を公表した。輸出量は179万トンで前年同期比+2.87%と回復したものの、品種価格が全て下落したため、輸出額は10億4600万ドル(約324億バーツ/約1530億円)にとどまり、前年同期比-4.65%の減収となった。バーツの対ドル為替が前年同期比+6.92%とバーツ高基調が続いたことも、ドル建て売上に圧力を加えた。タイ農業の主力輸出商品である米の収益力低下が浮き彫りになった結果だ。
数字を整理すると、2026年第1四半期の輸出量は179万トン(前年同期174万トン)、対前年同期比+2.87%。輸出金額は10億4600万ドル(前年同期10億9700万ドル)で-4.65%。バーツ建てでは約324億5000万バーツ(前年同期約371億4000万バーツ)。為替平均は1ドル=31.61バーツで前年同期から6.92%のバーツ高となっている。
価格下落は品種別にすべて発生した。3月の平均FOB価格(船積み価格)は、白米・もち米・パーマル米・タイ独自のジャスミン米(ホムマリ)を含む全カテゴリで下落を記録。これは、(1)ベトナム・インド産の競合米が増産で価格圧力を加えた、(2)中国の輸入需要が低調だった、(3)バーツ高で実質的な対外価格優位性が低下した、という3要因が複合的に作用した結果と分析される。
タイ米産業は依然として世界トップクラスの輸出国で、2024年は世界2-3位の輸出量を維持。しかし、近年はベトナム(高品質米でタイに肉薄)とインド(バスマティ米と廉価米で世界最大)に押され、タイ独自のホムマリ米の優位性も相対的に低下している。今回の量増・額減という構図は、価格競争が厳しくなる中で「数量を維持して市場シェアを守るが、収益性は落ちる」という防衛的な構造を象徴している。
タイ農家への影響は深刻だ。米農家は通常「もみ価格(ราคาข้าวเปลือก)」が直接的な所得源で、輸出米価格の下落は最終的にもみ価格の引き下げ圧力につながる。タイ政府は最近もドリアンの未熟果出荷停止、違法ドリアン肥料倉庫摘発など、農産物の品質管理を徹底する政策を進めているが、米についても品質維持と差別化が依然として喫緊の課題だ。
タイ・台湾貿易は2026年Q1で前年比+47.8%の過去最高を記録するなど、タイの輸出はテック・電子部品分野で力強い拡大を見せる一方、農産物では構造的な競争激化が続く。タイ経済の二極化(高付加価値分野の伸びと、伝統的農業の停滞)が継続する構図だ。
タイ在住の日本人駐在員にとって、タイの米輸出統計は直接の業務関連性は低いが、(1)地元タイ人パートナーの家計事情、(2)国内米価格の動向(家庭の食費)、(3)東部経済回廊(EEC)の人材・労働コスト圧力にも間接的に影響する。バーツ高基調が続く間は、タイで生活する日本人の現地通貨ベースの購買力が相対的に強まる一方、円換算した収入面では円安バーツ高で目減りする傾向となる。