タイの労働大臣チュラパン・アムロンウィワット氏が5月11日、社会保険局(สำนักงานประกันสังคม)で社会保険委員会・労災基金委員会・幹部らと意見交換を行い、(1)信頼性と透明性の回復、(2)対象拡大(プラットフォーム労働者・ギグワーカー)、(3)安全衛生・予防医療基準の向上、(4)サービス品質の総合向上、の4本柱政策を打ち出した。タイ国内の被保険者は2,400万人超で、現在のライダー人口30万人が3-5年で100万人規模に拡大する見通しを示し、新しい労働形態への対応を強調した。同時に、エネルギー危機への対応として「社会保険料の引き下げ」も検討対象に上げる方針を示した。
チュラパン労働大臣の政策骨子は次の4点。
| 柱 | 内容 |
|---|
| 1. 信頼回復 | 「透明性」と「説明責任」を原則、SNS等で能動的コミュニケーション |
| 2. 対象拡大 | プラットフォーム労働者・ギグワーカーを社会保険に取り込み |
| 3. 安全衛生 | 労災予防+リハビリ+復職支援で長期医療費を削減 |
| 4. サービス向上 | 多角的サービス品質強化、被保険者満足度向上 |
ギグワーカー対応の数字は印象的だ。タイ国内には現在、Grab・Bolt・LineMan・Foodpanda等のフードデリバリー・配車プラットフォームに登録するライダー約30万人。労働市場の構造変化により、3-5年以内に100万人に到達する見込みと労働省が予測している。これらの労働者は従来、社会保険の対象外となるケースが多かったが、新政策により(A)社会保険法第40条(任意加入制度)の活用、(B)新条項の制定、のいずれかで体系的に取り込む方針だ。
「ライダー100万人時代」の到来は、タイの労働市場が「正社員雇用→自営業者型ギグ」へ大きくシフトする予兆を示している。労働省としては、(i)労災発生時の医療補償、(ii)退職後の年金、(iii)育児・病気時の所得補償、を新形態の労働者にも提供するための制度整備を急ぐ。
社会保険料の引き下げ検討も注目される。タイ政府はエネルギー価格高騰の影響で「実質所得の低下」を懸念しており、(A)従業員側の社会保険料率引き下げ、(B)雇用主側との折半比率の見直し、(C)給付水準は維持しつつ財政持続性を確保、というバランス調整を検討中。同時に、CARE年金計算式(新方式)の運用も進めており、関係者協議に1か月を充てる。
労災基金の運用状況についてはチュラパン大臣が「基金管理は良好な水準を維持している」と説明。ただし「社会的コミュニケーションの問題で組織イメージが影響を受けている」と認め、「透明性・検証可能性」を原則とした能動的情報発信の強化を指示した。被保険者2,400万人の信頼を取り戻すには、(1)SNS発信、(2)公式ウェブサイト改善、(3)コールセンター応対品質、の全方位対応が必要となる。
直近では社会保険被保険者第39条が労働省にCARE方式を要求、チュラパン副財務相が社会保険信頼回復計画、など、社会保険制度改革は政府の優先課題として連続的に動いている。労働大臣と社会保険局の連携強化により、(A)給付の透明化、(B)対象拡大、(C)給付水準の最適化、の3つの方向性が固まる流れだ。
タイ在住の日本人駐在員家族にとっては、社会保険制度の動向は重要な情報となる。(1)タイで就労する日本人は雇用主経由で社会保険に加入することが多く、保険料率の変更は給与所得に直結、(2)タイ人配偶者の社会保険被保険者資格や給付内容、(3)退職後の年金受給資格(タイ国内年金制度)、(4)医療費補助の利用、などが影響する。本政策の正式実施時期と内容を注視し、年末の所得税申告・社会保険手続きで漏れがないよう対応することが推奨される。