チャンタブリー県タマイ郡のドリアン選別工場(ล้ง)で2026年5月12日、当局が従業員7人をヤーバー(メタンフェタミン錠剤)の所持・使用疑いで逮捕した。タマイ郡長代行の指示を受けた治安担当職員がドリアン収穫期の最盛期に突入検査を実施した結果、7人全員から尿検査陽性が出た。
チャンタブリーはタイ国内最大のドリアン産地の一つで、4〜6月の収穫期には選別・梱包工場が24時間体制で稼働する。逮捕された従業員は「徹夜で立ちっぱなしで選別作業をするために薬を飲んだ。薬で『ディット(冴え)』を感じて長時間作業できる」と自供した。収穫最盛期の過酷な労働環境が薬物使用の背景にあることを認めた形だ。
ドリアン産業はタイ農業輸出の最重要品目の一つだ。タイ商務省の統計では、2025年のドリアン輸出額は約1800億バーツを超え、輸出先の9割以上が中国だった。チェンラオ鉄道(中国・ラオス鉄道)を使った鉄道輸送が2024年から本格化し、バンコクからクンミンまで約26時間で生鮮ドリアンを届けられるようになったことで、輸出量はさらに拡大している。
一方で、この急速な輸出拡大の裏側では農場・選別工場での労働環境問題も浮かび上がっている。タイ労働省の基準では夜間労働には割増賃金が義務付けられているが、季節雇いの非公式労働者が多い現場での遵守状況は監視が届きにくい。薬物使用が発覚した工場はその場で操業停止となり、他の従業員も検査を受けることになる。
タイ当局は特に輸出向け食品の安全性管理に敏感で、薬物使用労働者が品質管理に関わることへの懸念がある。EU向け輸出では農薬残留基準とともに製造工程の安全基準も厳格に審査される。労働環境の改善なしには持続可能な産業成長は望めないとして、業界団体からも改善を求める声が出ている。

