タイの金延べ棒・コインに対する需要が2026年1〜3月に10トンに達し、2019年以降で最も強い四半期となった。価値ベースでは前年同期比35%の増加で、経済不確実性と政治緊張の高まりに金価格そのものの上昇が重なり、安全資産シフトが鮮明になっている。ワールドゴールドカウンシル(WGC)が四半期ごとに公表する金需要トレンド報告書で明らかになった。
タイ国内の金市場では、伝統的に金延べ棒(ทองคำแท่ง)や金貨が個人の貯蓄手段・贈答品・換金性の高い資産として強く根付いている。新学期や冠婚葬祭など現金が必要な局面では、家庭で保管している金を質屋や金店に持ち込んで現金化する文化があり、上昇局面では「持っている人は売って益出し、持っていない人は次の上昇を狙って買い増す」両方向の取引が活発化する。
WGCが今期のタイの強さの背景に挙げたのは、経済の先行き不透明感、政治情勢の緊迫化、そして金価格の上昇トレンドの3点である。タイランドを取り巻くマクロの不確実性が増すほど、株式や為替よりも実物の金にお金を逃がす行動が強まる。1〜3月は中東情勢の悪化や燃料価格の急変動と並走しており、家計レベルでの「とりあえず金」需要を押し上げた格好だ。
世界全体の金需要(店頭取引OTCを含む)は1,231トンで前年同期比2%増と量的には穏当だったが、価値ベースでは1,931億ドルに達し、前年同期比74%増を記録した。個人投資家の金延べ棒・金貨需要に絞ると474トンで前年同期比42%増と、量・価値ともに大きく伸びた。金ETFも需要拡大の波に乗っている構図が見える。
タイ在住者の生活への影響としては、金店での売り買いの値幅(ส่วนต่าง、スプレッド)が活発化する一方で、特に新学期前の家計逼迫で金店に駆け込む保護者の急増などの動きと連動している。価格が高ければ少ない量でまとまった現金を作れるため、足元の金価格高騰は家計救済の側面も持つ。投資家・生活者の両側面から、金市場のボラティリティが続く2026年第2四半期に向けて注視が必要となる。