タイ政府が4月初旬に打ち出した「旧車交換新車(トレードイン)」補助金構想の詳細が、タイ新車市場を一時停止に追い込んでいる。エーカニット・ニティタンドプラパート副首相兼財務相が同制度の条件策定を財務省次官と物品税局に指示してから約3週間、具体的な補助額や対象車種を待つ消費者が新車購入を延期しており、4月のディーラー販売は目に見えて失速しているとAutolife Thailandが伝えている。
物品税局のポーンチャイ・ティラウェート局長は4月21日、同局が5月中旬までに制度設計をまとめて財務省次官と財務相に提出する予定だと明らかにした。PM2.5削減と「グリーン経済への移行(Transition)」を大義名分に、旧車を廃車処理したうえで新車を購入する消費者へ補助金または減税で還元する設計になる見込みだ。対象車種は暫定的に100%電気自動車(BEV)とハイブリッド車(HEV)に絞られる方向で、ガソリン車やディーゼル車といった内燃機関車は除外される可能性が高い。
タイはすでにEV3.0(2022〜2025)とEV3.5(2024〜2027)の補助金制度を走らせており、国内工場の生産能力はほぼ限界に達している。今回の旧車交換新車制度は、これらの既存EV補助金と競合する形になりかねない。物品税局は「メーカー側の生産能力」「対象車両の総数」「補助単価と予算上限」の3点を慎重に検証する構えで、細部が固まるまで5月中旬までかかる見通しだ。
Autolife Thailandによると、4月のタイ自動車ディーラーの店頭では「いま買うと補助金が付かない」「5月の発表を待てば10万バーツ単位の優遇が付くかもしれない」と商談を延期する顧客が続出している。モーターショー(3月下旬)で注文したユーザーのなかには、納車を待たずにキャンセルを申し出る例も報告されており、メーカーとディーラーは在庫販売の計画見直しを迫られている。
制度の肝は、補助単価と対象台数である。仮に1台あたり5万〜10万バーツの補助が付き、年間数万台の枠が用意されれば、消費者側の買い替え心理が強く刺激される。一方で補助額が小さすぎたり対象が厳しく限定されたりすれば、既存EV補助金との上乗せ効果が薄れ、市場停滞が継続するリスクもある。5月中旬の発表が2026年後半のタイ自動車市場の流れを決定的に左右することになる。
タイで新車を検討している在タイ日本人駐在員や長期滞在者にとっても、この数週間は重要な判断期間となる。現在進行中のEV3.5補助金は継続しているが、旧車交換新車の詳細が固まるまでは「あと数万バーツ安く買えるかもしれない」という含みがある。メーカー純正の残価設定型ローンやキャンペーン特典が手厚い時期でもあるため、既存車売却を含めた総コストで比較検討するのが現実的だ。具体的な補助額が5月中旬に発表され次第、改めて試算する余地がある。