ナコンシータマラート県チャワン郡フアイプリック区の森で4月21日、57歳の男性ニポン氏が5月の蜂蜜採取中にオオミツバチ(ผึ้งหลวง)の大群に襲われ、高さ約30メートルの「ユワンプン」の木の上で死亡した。熟練の蜂蜜採集人でも蜂の攻撃の前には太刀打ちできなかった、タイならではの季節の事故である。
通報を受けたのはチャワン警察署の副警部補トットポン・トングケーオ氏で、サメーデット・ユパラート・チャワン病院の当直医と、シャム・ルアムチャイ・プーイン財団の救助隊と合流して現場に向かった。現場は手付かずの深い森で、ニポン氏の遺体は地上約30メートルのユワンプンの大木の上にあった。救助隊は地上から松明を焚き、煙で蜂を追い払う村の伝統的な手法を用いたうえで、慎重に木に登って遺体を収容した。
ニポン氏の遺体は全身に無数の蜂刺しの跡があり、水ぶくれ状の傷が体表を覆っていた。現場で当直医と初期検案を行った警察は、数えきれないほどのオオミツバチが集中的に刺し続けた結果、意識を失い高木の上で絶命したと推定している。蜂毒に対するアレルギー反応や多発刺傷による急性中毒が重なった可能性が高い。
ニポン氏は蜂蜜採りのベテランで、仲間の数人と森に入って蜂の巣を狙っていた。狙いは「5月の蜂蜜(น้ำผึ้งเดือน 5)」で、タイでは1年でもっとも濃厚・香り高いとされる稀少品種である。1瓶600〜800バーツの高値で取引され、大きな巣を一つ仕留めれば数十本分の蜂蜜が収穫できる。報酬の大きさゆえに、毎年この時期に命懸けで森に入る採集人が全国にいる。
ユワンプンの木はオオミツバチが営巣を好む樹種として知られ、1本に複数の巣がぶら下がることも珍しくない。ベテランは木登り技術と煙幕の使い方に長けていても、巣の位置や風向き、蜂の機嫌次第で反撃が致命的になる。今回の事故は「経験者でも油断できない」現場の厳しさをあらためて見せつけた形である。
在タイ日本人にとっても、森林部や国立公園でのトレッキング中に野生の蜂に遭遇するリスクは無関係ではない。蜂の巣を見かけたら5メートル以上離れる、黒い服装や香水を避ける、大きな音を立てない、走って逃げるのではなく低い姿勢で遠ざかるなどの基本対応を知っておくと、いざという時の生存率は大きく変わる。