サイバー犯罪捜査局(ปอศ.)は2026年4月10日、バンコク・バンケーン区のアパート前で、偽造した医師の診断書を使い保険金をだまし取ろうとした51歳の男を逮捕した。バンコク刑事裁判所が発行した逮捕令状(1257/2569)に基づく身柄確保で、容疑は文書偽造・偽造文書行使および保険金の詐欺的請求だ。
599バーツの保険料で10万バーツを狙う
事件の発端は2021年初頭にさかのぼる。容疑者の男は、当時タイで爆発的に売れていた「เจอ จ่าย จบ(見つかったら即払い)」型コロナ保険に加入した。保険料はわずか599バーツ。PCR検査で陽性と診断されれば一律で保険金が支払われる仕組みで、当初は多くの保険会社がこの商品を販売していた。
男は2021年11月、医師の診断書を偽造して保険会社に提出し、10万バーツの保険金を請求した。しかし保険会社側が書類を精査した結果、診断書が偽造であることが発覚した。保険会社が被害届を提出し、サイバー犯罪捜査局が約4年にわたる捜査を続けてきた。
「เจอ จ่าย จบ」保険が引き起こした社会問題
「見つかったら即払い」保険は2021年のデルタ株・オミクロン株の大流行期に請求が殺到し、複数の保険会社が経営危機に陥った。保険業界全体での損失は数兆バーツに上るとも推計され、タイ損害保険協会(TGIA)が特別支援措置を講じる事態になった。
一方で、この混乱に乗じた不正請求も多発した。偽の陽性証明や他人の診断書を流用したケース、医師と結託して虚偽の診断書を発行させたケースなど、手口は多様だった。当局には数千件単位の被害届が寄せられたとされており、今回の逮捕はそのうちの一件が時効前に決着した形だ。
4年越しの捜査が実を結ぶ
発覚から逮捕まで約4年が経過した。この間、当局は容疑者の所在を追い続けた。拠点を変えながら逃げ回っていたとみられるが、最終的にバンケーン区のアパート前で身柄を確保した。
599バーツの保険料で10万バーツを詐取しようとした計画は、偽造書類の発覚という皮肉な結末を迎えた。当局は同様の手口による未解決事案がまだ残っているとみて、引き続き捜査を進める方針だ。