タイの汚職防止委員会(NACC、ป.ป.ช.)は2026年3月末、前進党(Move Forward)の44名の国会議員が王室不敬罪(刑法112条)改正案を国会に提出したことが「重大な倫理違反」にあたるとして最高裁判所(司法部門法廷)に提訴した。書類は10箱分・ファイル数百冊に上り、書類搬送に3台のバンを要した光景がSNSで拡散した。
提訴の対象は前進党の現職・元職議員で、そのうち10名が現在の人民党(Phak Prachachon)議員に転籍している。これらの10名が審理中に職務停止命令を受けるかどうかが焦点で、政界の動向に大きな影響を与える可能性があった。
刑法112条(王室不敬罪)の改正は、タイの政治において極めて敏感な問題だ。前進党は2023年の総選挙で比例代表首位を獲得したが、同党が推進した112条改正の動きは保守派・軍部・宮廷派から強い反発を受けた。憲法裁判所は2024年に前進党の解散を命じ、党首ピター・リムジャルーンラットが政界から追われた経緯がある。
NACCによる提訴は、政党解散に続く司法・行政上の追い打ちとなった。NACCは独立機関として設置されているが、タイでは政治的に微妙な事件での判断が毎回注目を集める。被告側の議員たちは「立法権の行使は倫理違反ではない」と反論しており、国際法律家委員会(ICJ)などの国際機関も手続きへの懸念を表明している。
前進党の後継にあたる人民党は2025年時点でタイ最大の野党勢力を形成しており、議席数でも与党連合に次ぐ存在だ。今回の訴訟の行方は、タイ民主主義の実質的な強度を測る試金石として国内外から注目されている。