PTT傘下の石油小売会社ORは2026年4月4日、バイオディーゼルB20の販売拠点をサラブリー県とソンクラー県シンハナコーンの2か所に拡大した。B20はパーム油を20%混合したディーゼル燃料で、通常のB7(パーム油7%混合)より1リットルあたり5バーツ安い。ディーゼルB7が47バーツ台に高騰するなか、B20であれば42バーツ台で給油できる計算だ。
1日100リットル消費するトラックなら1日500バーツ、月に換算すると約15,000バーツのコスト削減になる。物流コストの上昇が社会問題化しているタイにとって、現実的な緩和策として注目されている。
B20とは何か
バイオディーゼルはパーム油などの植物性油脂をディーゼル燃料に混合したもので、B20はその比率が20%の製品だ。タイ農業の主要産品であるパーム油の需要を支える役割もある。通常のB7(7%混合)よりカーボン排出が少ない点で環境面のメリットもある。
ただし、すべてのエンジンに適合するわけではない。B20はパーム油の含有率が高いため、未対応のエンジンには使用できない。ORは販売対象として大型トラック、バス、農業用機械を主に想定しており、乗用車への適用は推奨していない。
燃料危機の背景
タイの燃料危機は2026年3月に本格化した。中東情勢の緊迫化で原油価格が急騰し、石油基金が底をついたことでPTTが一斉値上げに踏み切った。ディーゼル価格は危機前の約33バーツから47バーツ台へと40%以上も跳ね上がり、物流・農業・漁業に壊滅的な打撃を与えた。
イサーン(東北部)では数万台のトラックが運行停止に追い込まれた。漁船は出港できず、農業用ポンプも止まった。スリン県やナコンラーチャシーマー県の農村では、収穫を断念する農家も出始めた。政府は石油基金の緊急補充や燃料会社への供給命令を発動したが、根本的な解決には至っていない。
販売網拡大の意義と限界
B20の販売拠点は現在、サラブリーとシンハナコーンの2か所にとどまる。全国で数千か所を超えるガソリンスタンドの数と比べると、ごく限定的な普及にすぎない。ORは今後の拡大を示唆しているが、具体的な計画は示していない。
政府は石油基金によるディーゼル補助金の増額や精製マージン規制、輸入石油の特例措置など複数の対策を並行して進めている。B20の拡大はその中の一つの選択肢だが、価格差が5バーツにとどまる現状では、輸送業者のコスト削減効果は限定的だとの声もある。
タイの燃料構造
タイのエネルギー消費の約60%を石油が占め、国内産出はごくわずかで大部分を輸入に頼る。中東情勢や為替変動の影響を直接受けやすい構造だ。再生可能エネルギーへの転換も進めているが、輸送・農業・漁業の現場ではまだ代替できないのが現状だ。
B20が今後どれだけ普及するかは、ORの拡大投資と、エンジン適合の問題をどう解決するかにかかっている。政府・民間が連携した中長期的な解決策が求められる。