米国の高関税が、タイの太陽光パネル輸出に痛打を浴びせている。カシコン銀行系のシンクタンク「カシコン・リサーチ・センター」が公表した分析によると、2026年のタイの太陽光パネル輸出額は前年から68%縮小し、約3億2,100万ドルに沈む見通しという。前年は10億1,800万ドルだったから、約7億ドル規模が一気に消える計算になる。日本円にしておよそ1,000億円。中堅メーカー1社の年商が丸ごと吹き飛ぶような規模感だ。
引っかかったのは、関税率の幅が385〜1,012%という桁外れさだ。アンチダンピング関税(AD)と相殺関税(CVD)を組み合わせた数字で、メーカーごとに個別に算定されるため上下に大きく開く。それでもタイ製パネルの店頭価格は1枚あたり446ドル前後と試算されており、東南アジアで最も高い。ベトナム製272ドル、インドネシア製220ドル、ラオス製197ドル、マレーシア製155ドルと比べると、ほぼ2倍から3倍に跳ね上がる。
問題は、タイの太陽光パネル産業が米国市場に極端に依存してきたことだ。輸出全体に占める対米シェアは97%。実質的にアメリカだけを相手にしてきた産業構造が、関税というスイッチひとつで競争力を失った形になる。価格が2倍では、買い手の選択肢から外れるのは時間の問題だろう。
カシコン・リサーチは、この苦境の背景として米国側の見方を整理している。中国メーカーが東南アジア各国を経由して米国に輸出する「迂回」を米商務省が問題視し、タイを含む4か国に高率関税をかけた、という流れだ。タイは2010年代から太陽光関連の製造誘致を進めてきたが、その投資の出口がほぼ消えかかっている。
タイにとっては、自国で組み立てたパネルが行き場を失う現実をどう受け止めるかという話になる。代替市場を欧州や中東に求める動きも出てくるはずだが、年間10億ドル規模の販路を別の国で埋めるのは現実的ではない。米中対立の余波が、第三国の製造業をこれほど露骨に削るのか、と改めて思わされる数字である。