陸上運送局は3月30日、路線バスの運賃引き上げに向けた検討を進めていることを明らかにした。サラポン・パイタヤプン局長が同日発表し、燃料価格の高騰で路線バス事業者の経営が圧迫されているとして、運賃改定のためのデータ取りまとめとスリヤ・チューチャン交通大臣への報告を進める方針を示した。
タイの路線バス運賃は政府が上限を定めており、事業者が市場原理で自由に値上げすることはできない仕組みになっている。しかし中東情勢悪化による原油価格急騰でディーゼル燃料の価格が上昇し、現行の運賃体系では採算が取れず、運行を縮小・停止する事業者が相次いでいる。特に地方路線では補助なしでの運行継続が困難になっている事業者が増えており、公共交通の維持そのものが危ぶまれている状況だ。
タイ工業連盟は同日、物価が8から10%上昇し、輸送費も20から25%増は避けられないとの見通しを発表した。バス事業者にとっては車両の燃料費と整備費の双方が膨らむ中で、収入源となる運賃は据え置きという二重の打撃となっている。乗客数が少ない夜間・早朝路線や過疎地域への路線が優先して削減される懸念がある。
路線バスはタイの低所得層が日常的に利用する主要交通手段だ。値上げが実現すれば生活費を直撃するが、値上げを認めなければバス会社が廃業し、路線ごと消えてしまうリスクがある。政府は燃料補助金の在り方を含めた包括的な交通政策の見直しを迫られており、運賃引き上げは単なる交通問題にとどまらず、社会的弱者の移動権に直結する政策判断となる。
バンコクでは大量高速輸送(MRT)や高架鉄道(BTS)が発達しているが、地方都市や近郊では路線バスが交通の命綱となっている。日本でも地方のバス路線廃止が社会問題となっているように、タイでも同様の課題が燃料危機を契機に一気に顕在化している局面だ。