エクニティ・ニティプラパーパ副首相兼財務相は2026年3月28日、官邸での「Meet the Press(報道陣との意見交換)」形式の会見で、ディーゼル価格を市場原理に委ねる必要性を改めて強調した。引き合いに出したのは「1997年のタイ経済危機(トムヤムクン危機)」で、「あの失敗を繰り返してはならない」という危機感だ。
1997年の教訓
エクニティ氏の主張は「政府が人為的に価格を支え続けると、いつか財政がもたなくなって一気に崩れる。それが97年の危機だった」というロジックだ。1997年のタイ通貨危機では、固定相場制(バーツをドルにペッグ)を無理に維持しようとした結果、外貨準備が枯渇してバーツが急落した。
エクニティ氏は「今回のエネルギー危機も同じ構造だ。石油基金で無理に価格を固定しようとすれば、基金が枯渇した瞬間に一気に暴騰する。それよりも段階的な市場価格への移行を進めるべき」と述べた。
財政の限界
副首相は「国家予算は無限ではない。今回の中東危機は世界的な現象で、タイだけで解決できるものではない。限られた予算を最も困っている層に集中させるべき」と述べた。
石油基金の財政状況は厳しく、2025年末の推定残高は約1,000億バーツのマイナスだ。これ以上の補填は財政赤字の拡大につながる。政府は低所得層向けの福祉カードの補助増額(月300→400バーツ)などに予算を重点化する方針を示した。
タイ経済の現状
2026年第1四半期のタイのGDP成長率は前年比約1.5〜2%と低調だった。燃料高による物価上昇でコンシューマー信頼感が低下し、個人消費が伸び悩んでいた。観光業は回復しているものの、農業・製造業の低迷が全体を引き下げていた。
野党の反応
野党の民主党やルーム・タイ・サーン(ก้าวไกル)は「市場に委ねることは政府の責任放棄だ」と批判した。ただし代替案についての具体的な財源確保の議論は深まらず、政府・野党ともに「燃料問題の根本解決」への道筋を示し切れていない状況が続いた。