ランパーン病院は3月24日、頭蓋底腫瘍(海綿静脈洞腫瘍)の摘出手術を眼窩経由の内視鏡アプローチ(ETOA:Endoscopic Transorbital Approach)によって成功させた。頭蓋骨を大きく開く従来の開頭手術と異なり、目の周辺(眼窩)から細い内視鏡器具を挿入する低侵襲手術で、タイ地方病院での同手術成功事例は初めてとされる。
執刀したのはランパーン病院の神経外科医ウアアンクーン・シッティモンコン医師。海綿静脈洞部位の腫瘍は、視神経・動眼神経・外転神経など複数の重要な神経と血管が密集する解剖学的に極めて複雑な領域に位置している。従来は大きな開頭が必要で術後の回復期間も長かったが、ETOA法により脳と重要構造へのダメージを最小化した状態で腫瘍を完全摘出することに成功した。患者は術後の回復も良好で、日常生活に復帰している。
ETOA(内視鏡眼窩経由手術)は比較的新しい技術で、主に大学病院や高度医療機関が担ってきた。タイでは首都バンコクの大型病院にこうした最先端手術の経験が集中しており、地方病院での実施例は少ない。ランパーン病院での成功は地方医療の高度化という観点で意義がある。
タイ北部の中核都市ランパンに位置するランパーン病院は、北部地域の基幹病院として機能している。中部・北部の患者がバンコクの大病院に頼らずとも高度な神経外科治療を地元で受けられるようになれば、医療アクセスの地域格差縮小につながる。
日本でもETOAを含む低侵襲脳外科手術は専門施設で行われており、技術の普及が世界レベルで進んでいる。タイの地方病院でこの技術が実用化されたことは、医療機器の国際普及と技術教育の成果でもある。
