タイ国内の肥料店が化学肥料の価格を1袋あたり100バーツ引き上げている。中東のホルムズ海峡の緊張で原料の輸入が滞り、輸送コストも跳ね上がったためだ。農家からは「肥料は高くなる一方なのに、米の買い取り価格は下がる一方」と悲鳴が上がっている。
タイは化学肥料の40%以上を中東地域からの輸入に頼っている。特に窒素肥料の主原料である天然ガスはペルシャ湾岸諸国からの輸入が多く、ホルムズ海峡の封鎖リスクは肥料の供給に直結する。原油価格の高騰で天然ガスの価格も上昇しており、肥料の製造コスト自体が上がっている。さらに海上輸送費の高騰が追い打ちをかけた。
地方の肥料店では仕入れ価格の上昇分を小売価格に転嫁せざるを得ない状況だ。1袋100バーツの値上げは、何十袋も使う農家にとっては大きな負担増となる。ちょうど収穫期と次の作付け準備が重なる時期であり、肥料の需要がピークを迎えるタイミングでの値上げが痛い。
一部の農家は採算が合わないと判断し、自分で耕作するのをやめて田んぼを他人に賃貸する選択をしている。「肥料代は上がる、燃料代も上がる、でも米の価格は下がる。自分でやるより貸した方がましだ」という声が取材で聞かれた。
農業省は有機肥料への切り替えを推奨しているが、現場では化学肥料なしでは収量が維持できないとの声も根強い。タイ農業の基盤を揺るがす問題になりつつある。