タイ農業・協同組合省のウィナロート・サップソンスク事務次官は3月27日、化学肥料の使用比率を下げ有機肥料との割合を70対30にするよう農家に要請した。中東紛争による物流コストの急騰で化学肥料の供給逼迫と価格上昇が続くなか、コスト削減と供給量確保の両面から転換を促す。
危機の背景:尿素肥料とホルムズ海峡
タイが輸入に頼る尿素肥料は、製造に天然ガスを大量に使う。中東のガス田からの調達がホルムズ海峡の緊張で影響を受けており、輸送コストと調達コストが同時に上昇している。タイの農業肥料の約40〜50%が輸入品とされており、価格高騰は農家の生産コストに直撃する。
今回の緊急要請は、「収穫期と次の作付け準備期が重なるこの時期に需要が急増している」という事務次官の危機認識から出された。
有機肥料70%、化学肥料30%という目標
農業省が示した比率は、化学肥料の使用量を約70%削減するという大幅な目標だ。これは「現在の化学肥料供給だけでは全農家の需要を賄えない」という現実を認めた上での措置でもある。
有機肥料の利点はコスト削減だけでなく、土壌改良にもある。タイ農業省は長年にわたり有機農業への転換を推奨してきたが、化学肥料の利便性から普及は進んでこなかった。今回の危機がある意味で転換を強制するきっかけになる可能性もある。
タイ農業の基礎数字
農業はタイGDPの約8%を占め、労働人口の約3割が従事する。主要輸出品はコメ(年間約800万トン輸出)、砂糖(4位)、天然ゴム(1位)、タピオカ(キャッサバ)で、いずれも肥料の安定供給が生産量と品質を左右する。
事務次官は「農業省単独での解決は難しい。商務省の価格管理と関連機関との連携が不可欠だ」と述べ、政府全体での対応を求めた。