アヌティン・チャーンウィーラクン首相が2026年3月下旬の記者会見で、ディーゼル価格が一度に6バーツ値上がりしたことについて「市場原理によるものだ。さらに上がる可能性もある」と述べた。政府が燃料価格を市場に委ねる姿勢を明確にした発言として、国内メディアが大きく報じた。
「市場原理」発言の文脈
中東情勢の悪化が続き、原油価格が急騰するなかでタイの石油基金(Oil Fund)は連日巨額の補助支出を余儀なくされた。基金の財政赤字は1日あたり数十億バーツに達しており、これ以上の価格抑制は不可能と判断した政府は、段階的な値上げを容認した。
首相は「原油価格の上昇は世界共通の現象であり、タイだけ完全に切り離すことは財政的に不可能だ」と説明した。補助金を続ければ石油基金が破綻し、その後の急激な値上がりにつながりかねないという事情があった。
国民の受け止め
「さらに上がる可能性がある」という首相発言は、国民の間に不安と反発を呼んだ。燃料はタイの生活・産業の基盤であり、価格上昇は食料品・輸送・農業のすべてに波及する。SNS上では「首相が何もしないと言っている」「政府は何のためにある」という批判が広がった。
タイの燃料補助の限界
タイはかつてアジアでも例外的に燃料価格への補助が手厚い国の一つだった。しかし中東危機による原油価格の急騰は、従来の補助維持が「構造的に限界に達した」ことを示した。
経済学者からは「長年の補助金依存が市場の価格シグナルを歪め、省エネ投資や代替エネルギーへの転換を遅らせてきた」との指摘も出ている。今回の危機は、タイがエネルギー政策を根本的に見直す転換点になると見る専門家もいる。
タイの年間ディーゼル消費量は約200億リットルで、1リットルあたり1バーツの値上がりは、国民経済に対して年間200億バーツ(約900億円)規模の負担増加を意味する。