コロナウイルスの新変異株「Cicada(シカダ)」が世界的に広がっている。正式名称はBA.3.2。2024年11月に南アフリカで初めて確認され、現在23か国以上で検出されている。タイではまだ公式な感染例は報告されていないが、タイ国立ワクチン研究所が監視を強化している。
名前の由来は昆虫のセミ(cicada)だ。何年も地中に潜伏した後に一斉に地上に現れるセミの生態になぞらえた命名で、タイでは「จิ้งหรีด(コオロギ)由来ではないか」とSNSで噂が広がったが、研究所はこれを否定した。タイではコオロギ食が普及しているため、食の安全に関する誤解が広がりやすかった。
BA.3.2の最大の特徴は、スパイクタンパク質に70〜75か所もの変異がある点だ。現在主流のXFG株やJN.1株とは大きく異なり、CDCの研究室実験では既存の抗体をかなりの程度すり抜けることが確認された。ただしWHOは2025年12月の初期評価で「BA.3.2は他の流行株に対して持続的な増殖優位性を示しておらず、重症化・入院・死亡の増加を示すデータはない」としている。現在も「監視中の変異株(variant under monitoring)」に分類されている。
注目すべきは、Cicada変異株が子どもに感染しやすい傾向を見せている点だ。CNNやCBSの報道によると、特に3〜15歳の小児で感染例が目立つ。ただし子どもでも大人でも重症化率は従来株と変わらず、症状は喉の痛み、発熱、頭痛、咳、倦怠感が中心だ。
現在のコロナワクチンはCicada変異株に対して効果が弱まるものの、重症化を防ぐ効果は維持されるとWHOは見ている。CDCも「完全に免疫を逃れるわけではなく、ある程度の交差反応性は残る」との見解だ。免疫力が低下している人や高齢者にはブースター接種が推奨されている。
日本では厚生労働省がBA.3.2の監視を開始しているが、2026年4月時点で国内での感染例は限定的だ。タイでは4月中旬のソンクラーン(タイ正月)で国内外の人の移動が大幅に増加する。水かけ祭りの密集した環境は感染リスクを高める。在タイ日本人や旅行者は、体調管理と基本的な感染対策(手洗い・換気)を改めて意識すべきタイミングだ。
タイ保健省の疾病管理局は日常的にゲノム解析を実施しており、BA.3.2が国内で確認された場合は速やかに公表するとしている。
