2024年11月に南アフリカで初めて確認されたコロナ新変異株「Cicada(シカダ)」、正式名称BA.3.2が世界で広がっている。2026年4月時点で23か国以上で検出され、タイでは公式な感染例こそ未報告だが、タイ国立ワクチン研究所と保健省疾病管理局が監視を強化している。スパイクタンパク質に70〜75か所もの変異を持ち、特に3〜15歳の小児で感染例が目立つ点が特徴で、ソンクラーン(タイ正月、4月中旬)の人の移動増加と重なるため在タイ日本人にも警戒が呼びかけられている。
Cicadaという名前の由来とコオロギ騒動
名前の由来は昆虫のセミ(cicada)で、何年も地中に潜伏した後に一斉に地上に現れるセミの生態になぞらえた命名だ。タイでは「จิ้งหรีด(コオロギ)由来ではないか」とSNSで噂が広がったが、タイ国立ワクチン研究所はこれを明確に否定した。タイではコオロギ食が普及しているため、食の安全に関する誤解が広がりやすく、当局が繰り返し「昆虫とは無関係」と説明している経緯がある。
BA.3.2の特徴:70-75か所の変異と免疫逃避
BA.3.2の最大の特徴は、スパイクタンパク質に70〜75か所もの変異がある点だ。現在世界の主流であるXFG株やJN.1株とは系統が大きく異なり、米CDC(疾病対策センター)の研究室実験では既存の抗体をかなりの程度すり抜けることが確認された。ただしWHO(世界保健機関)は2025年12月の初期評価で「BA.3.2は他の流行株に対して持続的な増殖優位性を示しておらず、重症化・入院・死亡の増加を示すデータはない」としており、現在も「監視中の変異株(variant under monitoring)」分類のままにとどまっている。
子どもへの感染傾向と症状
注目すべきは、Cicada変異株が子どもに感染しやすい傾向を見せている点だ。CNNやCBSの報道によると、特に3〜15歳の小児で感染例が目立つ。ただし子どもでも大人でも重症化率は従来株と変わらず、症状は喉の痛み、発熱、頭痛、咳、倦怠感が中心。子育て世代の在タイ日本人ファミリー、日本人学校・インターナショナルスクールに通う子どもの保護者は、咳・喉の症状が出たら早めの受診と自宅療養を意識した方がいい。
既存ワクチンは効くのか
現在のコロナワクチン(JN.1適合株ベースなど)はCicada変異株に対して効果が弱まるものの、重症化を防ぐ効果は維持されるとWHOは見ている。CDCも「完全に免疫を逃れるわけではなく、ある程度の交差反応性は残る」との見解だ。免疫力が低下している人や65歳以上の高齢者には、引き続きブースター接種が推奨されている。
タイ国内の監視状況
タイ保健省の疾病管理局(DDC)は日常的にゲノム解析を実施しており、BA.3.2が国内で確認された場合は速やかに公表する体制を取っている。詳細な国内監視動向と最新の検査体制についてはCicada変異株 タイ国内監視動向で別途まとめている。
関連背景
タイでは4月中旬のソンクラーン(タイ正月)で国内外の人の移動が大幅に増加し、水かけ祭りで密集した環境が生まれる。これはどの感染症にとっても拡大の追い風となるため、在タイ日本人や旅行者は基本的な感染対策(手洗い・換気・体調不良時の早期受診)を改めて意識したい。マスクは法的義務ではないが、人混みや空調の効いた屋内ではあった方が安心だ。
日本では厚生労働省もBA.3.2の監視を開始しているが、2026年4月時点で国内での感染例は限定的。タイへの渡航者は出発前後の体調管理に加え、海外旅行保険の補償内容(コロナ関連が含まれているか)も確認しておくと安心だ。