タイでは電子タバコの製造・輸入・販売が法律で禁止されている。にもかかわらず、利用者数は過去3年間で11倍に急増した。電子タバコユーザーのネットワークは、新政権に対し現行の禁止政策の見直しを求めている。
禁止の根拠は2014年12月の商務省令で、電子タバコおよび加熱式タバコ(IQOS、glo等)を含むすべての電子ニコチン送達システムが対象となる。2017年からは加熱式タバコも明確に禁止対象に追加された。タイ国政府観光庁も日本語公式サイトで注意を呼びかけている。
違反時の罰則は極めて重い。所持だけで最大5年の禁固刑または商品価格の4倍の罰金、輸入の場合は最大10年の禁固刑または商品価格の5倍・最大50万バーツ(約210万円)の罰金が科される。公共の場での使用には最大5,000バーツの罰金もある。外国人旅行者にも例外はなく、ホテルの客室内での使用でも摘発された事例がある。
実際に日本人が巻き込まれるケースは後を絶たない。2018年にはプーケット空港でIQOSを所持していた日本人観光客が税関で拘束され、約5万バーツ(当時約20万円)の罰金を請求された。バンコクのスクンビット通りでは、フジスーパー付近でIQOSを使用していた日本人が現行犯逮捕され、警察署に連行。最終的に2万バーツで示談となった。さらに深刻なケースでは、知人のタイ人に頼まれてIQOSを4カートン持ち込んだ日本人がスワンナプーム空港で入国後に摘発され、数日間拘束されたのち罰金を支払い、日本に強制送還されている。
タイ当局の取り締まりは年々強化されている。2025年2月から5月にかけて、政府は全国で2,500件以上の電子タバコ関連の摘発を実施し、約169万点・総額5億5,000万バーツ相当を押収した。スワンナプーム、ドンムアン、プーケットの各空港ではX線検査で電子タバコを検知しており、手荷物に紛れ込ませても発見される可能性が高い。さらに、タイでは市民が電子タバコの使用を通報すると、違反者に科された罰金の最大60%が報奨金として支払われる制度がある。観光地でタイ人に目撃されれば通報されるリスクもある。
推進派は、電子タバコは従来の紙巻きタバコより害が少ないという公衆衛生上のデータを根拠に合法化を求めている。闇市場で品質管理されていない製品が流通するよりも、合法化して規制した方が国民の健康を守れるという論理だ。実際、利用者が11倍に急増している現状は、禁止政策が抑止力として機能していないことを示している。
一方、タイ保健省は禁止の維持を主張している。若年層への普及を懸念しており、ニコチン依存の入り口になると警戒する。WHOも電子タバコの安全性を完全には認めていない。新政権がどちらの立場を取るかで、タイの電子タバコ政策は大きな転換点を迎える可能性がある。
タイを訪れる日本人旅行者にとって最も重要なのは、「知らなかった」では済まされないという事実である。IQOSやPloom、gloなど日本で日常的に使っている加熱式タバコも、タイに持ち込んだ瞬間に違法となる。渡航前に必ず自宅に置いていくべきだ。



