タイの石油基金(Oil Fund)の財政赤字が2026年3月末時点で2兆8千億バーツ(約1.3兆円)に膨らんだことが明らかになった。中東情勢の悪化で国際原油価格が急騰するなか、ディーゼル価格は1リットル31.14バーツに到達した。
石油基金の役割と仕組み
タイの石油基金は1974年に設立された政府の安定化基金で、国際原油価格が急騰した際に国内燃料価格への影響を緩和する役割を担う。ガソリン・ディーゼル・LPGなどの価格が一定以上に上昇した場合、基金からの補助金で小売価格を抑制する仕組みだ。
ただし補助金が長期化すれば基金の財源が枯渇する。今回の2兆8千億バーツという赤字は、基金設立以来最大規模で、1日あたりの補助負担が数十億バーツに達する事態になっていた。
ディーゼル31.14バーツの意味
ディーゼル1リットル31.14バーツというのは、石油基金が補助を続けつつも段階的に引き上げを認めた水準だ。石油基金委員会はそれまで30バーツ以下に抑えてきたが、財政悪化を受けて上限を引き上げることを余儀なくされた。
農業・漁業・物流を直撃するディーゼル価格は、あらゆる食料品やサービスのコストに波及する。1バーツの値上がりが食料品全般の物価を0.1〜0.3%押し上げるとの試算もある。
補助廃止の懸念
石油基金の財政悪化が続けば、いずれは補助を縮小または廃止せざるを得ない。当時すでに、次のステップとして「ガソリン・LPGへの補助縮小」が議論されていた。
ガソリン補助が廃止されれば、バイクや乗用車を使う中・低所得層の生活費が一気に跳ね上がる。LPG補助の廃止は家庭用調理燃料と商業用ガスの両方に影響し、飲食業・農業に直撃する。
タイのエネルギー補助政策は長年にわたる「アキレス腱」とされており、今回の赤字膨張は改革の必要性を改めて浮き彫りにした。