エネルギー規制委員会(ERC)は2026年3月25日の会議で、経済的に脆弱な世帯の電気代を補助するよう政府に提言した。月200〜300単位(kWh)までの使用分を対象とする案で、LNG価格高騰による電気料金の上昇が家計を圧迫していることへの対応策だ。
提言の背景
中東の軍事衝突が長期化し、タイが電力発電の主燃料として輸入に頼るLNG(液化天然ガス)の価格が急騰した。LNGは1百万BTUあたり約12ドルから25ドルに倍増し、燃料費変動調整費(Ft)が1単位あたり約58サタン上昇する状況になった。さらにバーツが対ドルで9か月ぶりの安値圏(32.93バーツ)に下落したことが輸入コストをさらに押し上げた。
電気料金の上昇は低所得層と脆弱世帯に最も重くのしかかる。タイのFt制度では3か月ごとに料金が改定される。2026年5〜8月のFtの算出方法について、ERCは複数の選択肢を検討し、最終的な発表を2026年3月25日の会議後に行う予定としていた。
補助の仕組みと対象
提言では月200〜300kWh以下の使用世帯を「脆弱世帯」と定義し、超過分と異なる料金体系を適用することが検討された。タイでは電力低所得者向けの福祉カード(บัตรสวัสดิการแห่งรัฐ)保有者を対象とした補助制度が既に存在するが、今回の提言はその対象拡大や補助額の増加を念頭に置いたものだ。
タイの一般家庭の平均電力消費量は月200〜400kWh程度で、月200kWh以下の世帯は主に低所得の単身者や高齢者世帯が多い。
電力コスト構造
タイの電気料金はEGAT(発電公社)、MEA(首都圏配電公社)、PEA(地方配電公社)の三層構造で決まる。住宅用では基本料金に加え従量料金(約3〜5.8バーツ/kWh)とFtが上乗せされる。Ftが58サタン上昇すると、月300kWh使用の家庭で月174バーツ(約870円)の負担増となる。
日本の場合、2022〜2023年の電気料金高騰時に政府が激変緩和措置として家庭向け補助(1kWhあたり7円)を実施した。タイの今回の提言も同様の発想で、急激な料金変動から脆弱層を守るセーフティネットの一環と位置づけられる。