タイ大臣府所属のソパマス・イサラパクディ大臣は5月19日午前9時40分、政府庁舎で記者団の問いかけに答え、FIFAワールドカップ2026の放映権を政府が買い取る計画について、事実上の見送りを示唆した。FIFA側から提示された金額が、海外と比べて10倍から20倍も高く、国民への説明がつかない水準だったという。
ワールドカップ2026は6月11日から7月19日にかけて、アメリカ・カナダ・メキシコの3カ国で開催される。ソパマス大臣によれば、アヌティン首相は当初、「タイの国民にワールドカップを存分に楽しんでほしい」という意向で、先週の閣議で広報局・民間・NBTC(放送通信委員会)と協議するよう指示していた。ところが調整を進めると、「以前とは状況が違う」ことが分かってきたという。
引っかかったのは、ソパマス大臣の「もし値段がフェアでないなら、そのお金は別のことに取っておくべきだ」というひと言だ。これまでのタイ政府は、2018年や2022年のワールドカップで、放送業界とNBTCを巻き込みながら、なんとか国民が無料で見られる形に持ち込んできた。今回、その「がんばりの行使」を最初から降りる姿勢を見せたのは、なかなか思い切ったメッセージに見える。
理由として大臣が挙げたのは2つだ。1つは中東情勢の悪化。原油や物価への影響が読みにくいなかで、王道の「娯楽より生活」の論理が回ってきた。もう1つが、開催地がアメリカ・カナダ・メキシコであることに起因する放映時間帯の問題だ。タイから見ると試合は早朝・深夜中心になり、レストランや屋台で大画面を囲んで盛り上がる、というスポンサーが期待しがちな「飲食店での広告効果」が薄い。
FIFA側の提示金額は、放映権交渉の守秘義務のため、ソパマス大臣も具体的な数字は明かしていない。ただ「他国の10-20倍」という表現の重さは、十分伝わる。タイのサッカーファンにとっては正直つらいニュースで、6月の試合をどこでどう観るのか、各家庭ごとに頭をひねる夏になりそうだ。

